新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

明白に罪になってしまう事も

 本書はこれまで5冊紹介した、21世紀研究所の「世界地図シリーズ」の1冊。昨年紹介した「常識の世界地図」は、海外旅行に行くとき(あるいは外国人を迎えたとき)に注意すべきことが書いてあった。日本人が知らない、外国では明白に罪になってしまうこともあって、本書はそれを示してくれている。

 

 前半は<ハンムラビ法典>から<ナポレオンの民法典>にいたる、近代以前の法規のお話。英国「ジョン王」の悪政(?)から<マグナカルタ>が制定されるなど、各地の基本法や法の考え方が紹介されている。続いてイスラームの法体系で、窃盗罪、初犯は右手、再犯は左足、以後左手、右足を斬る刑罰が載っている。その他鞭打ちや石打ちの刑など、日本人の感覚では理解できない。

 

 そのあと、文明国も含めての注意事項があって、これが参考になる。

 

シンガポール

 刑罰の厳しい国、マリファナ500g所持で死刑である。ごみのポイ捨てでも1,000ドルの罰金、雨どいのメンテ不良でボウフラを発生させ再犯だったりすると6ヵ月の懲役もあり得る。ナイフの持ち歩きは厳禁、万一拳銃を発砲すれば(被害なしやおふざけでも)死刑。

 

        

 

◆タイ

 今は緩和されているかもしれないが、王家に対する不敬罪がある。国王の肖像を描いている紙幣は、肖像を中折にしてはいけない。コインにも肖像があり、コインを踏むなどもってのほか。

 

◇中国

 毛沢東は「法律は伸び縮みする物差し」と言った。適用されるされないは、当局の意志で決まる。一方取り締まられる方にも工夫があって「北京で指令が出ると、上海では対策が練られ、広州では指令書がシュレッダーにかけられる」ともいう。

 

 法律の適用に関しては他の国でも特徴がある。

 

・フランス 法律で禁じられていること以外は、原則OK

・ドイツ 法律で許されていること以外は、原則NG

・イタリア 法律で禁じられることでも、OKなことがある

旧ソ連 例え法律が許していても、事実上すべてが禁止

・スイス 法律で禁じられていること以外は、すべて実施する必要がある

 

 「悪法」として米国のかつての禁酒法が取り上げられているが、現在のPL法も悪法の内かもしれない。マクドナルドでコーヒーを買い火傷を負った老婦人への賠償金は270万ドルにもなった。「弁護士多ければ訴訟多し」で、法曹界を肥やすためにこの法律が濫用されるとある。うーん、日本もその方向ですかね。弁護士、増えてますし。