新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ヘンリ・ティベット主任警部登場

 英国ではアガサ・クリスティの後継者と言われた女流作家が、戦後何人か出た。そのうちの一人が、本書(1965年発表)の作者パトリシア・モイーズ。正統的なミステリー手法で、スコットランドヤードの主任警部ヘンリ・ティベットと妻エミーの物語を20作ほど遺した。学生の頃デビュー作「死人はスキーをしない」(1959年)を読んだ記憶はあるのだが、細かな内容は覚えていない。このブログでも、長編は1作も紹介していない。そもそも手に入らないのだ。本書も、新橋の古書市で偶然見つけたもの。

 

 本書では、エミーが旧姓ブランディッシだった20年前の事件が発端になる。ブリテン島上空の空戦が続いていた1943年、1ダース以上のドイツ機を墜としたエースであるボウ・ゲスト少佐は、墜落した後遺症で飛べなくなり後方のディムフィールド基地に配属されていた。そこで管制官をしていたエミーは、飛べなくて悩むボウと派手な妻バーバラが巻き起こす騒動を目の当たりにしていた。

 

        

 

 ある日ボウは新鋭機タイフーンを駆って無断出撃し、行方不明となった。その後バーバラはボウのライバルだったビアと結婚、戦争が終わって基地の人達はそれぞれの道を歩んだ。そして20年後、エミーのもとにディムフィールド基地のOB/OG会をしようとの案内が届く。懐かしい人達と会えて喜んだエミーだが、バーバラが管制係だったロフティにボブの伝記を書かないかと勧め、作家志望のロフティがその気になった件の手伝いをする羽目になる。

 

 基地の人達へのインタビューを手分けするうち、ロフティがガス中毒死してしまった。ヘンリはロフティの取材メモが無くなっていることから他殺を疑い、妻エミーも危険だと判断する。後方とはいえ戦時の基地での複雑な人間関係、ボウの死の背景もわからない。ヘンリは妻を守りながら、現在と20年前の事件を解決しようとする。

 

 うーん、古典的な英国ミステリでしたね。この作者の本、もっと手に入れたいのですが、無理でしょうか?