2021年発表の本書は、ルポライター安田峰俊氏の国際情勢レポート。<月刊Voice>に2020~21年にかけて連載された記事を、加筆・修正したもの。習政権になって「戦狼外交」が顕著になっているが、それ以前は多くの国が米国や日本より好感をもっていた中国に対し、多くの国(*1)が「嫌中」に変化したとある。しかし、今はどうなのか。筆者は様々な事情を抱える12ヵ国を選び、中国との関係について記述している。あえて総括すると、
・一帯一路各国には宥和を図っているが、個別に外交問題を抱えている
・中南米、太平洋諸国への働きかけを強め、台湾と断交させることに成功
・先進国には中国系住民を増し、民主主義に「挑戦」し始めている
となるだろう。例えば、
一帯一路始点の国、鉄道敷設など中国資本が進出している。資源国としても重要だが、中国系住民が襲撃されるケースが増えている。背景には、イスラム教徒である新疆ウイグル地区への弾圧問題がある。
◆ナイジェリア
大国で人口増が激しい。中国系の企業・住民も増えていて、地域によっては中国青年が「酋長」に就任することもある。ただ、中国人の「黒人蔑視」意識が顕著になってきて、急速に嫌中意識も高まっている。
◇カナダ
G7の中で最も人口が少ない国で、中国系移民が増大している。すでに総人口5%を占め、1990年代に香港から逃げ出した人が多かった。中国系の国会議員、首長も増えている。
◆スリナム
南米の小国(人口60万人未満)だが、金鉱山に中国人が殺到し、人口比率が増えた。小売り網の9割は華人資本で、今や中国系の大統領まで出ている。
サイバー大国として連携強化を図りたい中国だが、明朝時代にいたとされる「開封のユダヤ人」問題がしこりになっている。清朝時代には弾圧によって消えてしまったとされる人々だが、最近その子孫を名乗りイスラエルに帰国し軍に入隊する例もある。
フロンティアではまだ「中国の恩恵」を有難がっている国もあるのですが、先進国はもちろん発展し始めた国も距離を置き始めいる実態が良く分かりました。
*1:特に欧州、英連邦の国で顕著