2019年発表の本書は、産経新聞で香港・北京取材が長かったジャーナリスト福島香織氏の新疆ウイグルレポート。習大人のグローバル政策「一帯一路」の陸の起点となる地域だが、ウイグル族他のイスラム教徒が多い地域に漢民族が入植を続けている。
ウイグル他の種族は、子供の数が多い。「一人っ子政策」が転換されたとはいえ、特殊出生率が1.2(それすら粉飾との説もある)を越えない漢民族が、支配を強めるにはウイグル族らを同化するか減らすしかない。そこで、
・100万人強制収容所を作り、洗脳教育をする
・伝統、文化、習俗、言語、歴史などを全否定する
・同族での結婚を妨害するため、若年層を出稼ぎに出す
・強制労働や暴行、監禁、不妊手術から、臓器目的の殺害までする
ように21世紀最大の人権危機が起きているというわけ。
1950年代まではソ連が新疆を独立させ<東トルクメニスタン共和国>にしようとするなど、まだ中国支配は強くなかった。中国自体が弱かったせいである。しかし1980年代から<改革開放>によって国力が増してくると、ソ連の衰退もあってこの地区への支配が強くなる。これに対して、
1990年、バリン郷事件。農民5,000人ほどが蜂起
1997年、グルジャ事件。平和的なデモを打ち壊しとして鎮圧、死者100人以上
2009年、7・5事件。ウイグル人労働者を漢族が襲撃、3,000名余りが蜂起して鎮圧により2,000名ほどが死傷
と悲劇が繰り返されている。<9・11テロ>以降、中国政府は<テロとの戦い>の潮流に乗って、この地域を弾圧し続けた。新疆の都市は、清潔だが人に生気のない街になり、日本に留学しているウイグル人にも圧力がかかる。周辺にはイスラム教国も多いのだが、中国の力の前に「見て見ぬふり」をしているとある。
しかし、何かで火が付けば爆発するエネルギーは充満していますね。習大人の悩みのタネであることは確かです。