新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

無自覚の工作員

 昨日トランプ&プーチンという2人の大統領が、キリスト教福音派ロシア正教からは理想的な首班であるとする書を紹介した。ではこの2人はどう繋がっているのだろうか?公式には2017年のヘルシンキでのG20会合が初対面だとなっているが、2013年にはミスユニバース大会をモスクワで開催したおりに、主催者トランプはプーチンを招こうとしたし、その時は「トランプタワー・モスクワ」構想を持っていた。

 

 さらに2008年に経営危機に陥ったトランプを、プーチンに近い新興財閥がフロリダの不動産を相場の倍で買い取る形で支援している。2004年には、ニューヨークの「トランプ・ワールドタワー」の高層階の住人の1/3はロシアの新興財閥だったと本書にある。20世紀にもロシアとのつながりは強いトランプだったが、プーチン時代には一層関係が深まり、元CIA副長官はニューヨークタイムズに「トランプはロシア政府の無自覚の工作員だ」との記事まで書いている。

 

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 本書の焦点は2016年の大統領選挙に対するロシアの関与と、それについての捜査状況である。当初泡沫候補と見られていたトランプだが、共和党予備選を勝ち抜いた。しかし民主党ヒラリー候補に勝てるとは、専門家は考えていなかった。しかしヒラリー候補には「腐敗したエリート」とのレッテルがSNS等で貼られ、徐々に追い詰められていく。

 

 実は民主党全国委員会(DNC)はロシアのハッカー集団「APT28/29」にハッキングされ情報を抜かれ、機密を暴露されたり情報工作に利用されたりしている。これらの集団は、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)指揮下にある。また謀略工作に長けたロシア連邦保安庁FSB)も関与していたという。プーチンは首相になる前、FSBの長官だった。これらの機関は偽アカウントから米国世論を操作し、民主主義そのものへの信頼を無くさせようとしている。例えばBLM運動の起点も、彼らが作ったとする説もある。

 

 本書は読売新聞の米国支局長が、ロシアの専門家の助けを借りて書いたもの。発表された2018年夏の時点では、ロシアゲートの結論・トランプ弾劾・トランプの二期目などが定まっていなかった。しかしこれらが見えるようになった今でも、この2人の陰の連携は重大な疑惑として存在している。今後の国際情勢に影響を与えるものになるでしょうね。