新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

神が遣わした2人の大統領

 何度か僕の苦手なものとして「お金」を挙げているが、実はもっと苦手なものがある。それが「宗教」。産まれた家は仏教徒、中でも禅宗なのだが、親戚の葬儀や法事くらいしか仏教徒だとの意識になったことは無い。仏教の教義もまるきり分からないが、もっと困るのがイスラム教やキリスト教

 

 何かの間違いで中東などに派遣された場合には、恐らく半年も生存できなかったろうと思う。ほぼ引退状態になって、一番安心したことがそれだ。ただ欧米には今後も旅行、あるいは出張もあるかもしれない。キリスト教くらいは、上っ面でも勉強しておくべきだろうか?そんな意識もあって、手に取ったのが本書(2019年発表)。著者の金子夏樹氏は日経紙の記者で、モスクワ支局4年勤務の経験を基に本書を書いた。

 

 筆者がモスクワにいた間に、プーチン大統領ウクライナに侵攻しクリミア半島を我が物にした。それ以前から欧米諸国との軋轢は高まっていて、経済制裁などを受けて国家財政は厳しいのだが市民からの支持は高い。その背景にあるのが、ロシア正教会の熱烈な支持だ。プーチン大統領ロシア正教の教えを厳密に守り、同性婚や妊娠中絶などに厳しい。

 

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 LGBTなどに優しいオバマ政権の登場や、ハリウッド映画で同性婚を賛美するシーンが増えるなど、国際社会でリベラル思想が台頭する中、ロシア正教会からは「大統領は神から遣わされた」と賛辞が送られている。

 

 さらに筆者が帰国後、今度は米国で異変が起きる。「私はLGBTの人達のために大統領になる」と立候補したヒラリー候補が、泡沫と見られていたトランプ候補に敗れたのだ。やはり聖書を絶対的な書物と考えるキリスト教福音派が、力を尽くしたと言われている。トランプ大統領は就任するやLGBT支援のNPOへの資金提供を停止、国連の関連機関へのお金も止めた。福音派からはやはり「神から遣わされた大統領」と言われた。

 

 この2人が(欧米のロシア制裁という情勢下でも)シンパシーを通じ合ったのは、こういう底流があったからだ。このあたりは日本人には分かりづらい。フランスの反リベラル政党「国民戦線」など各国にも同様な政治的な流れがあると、著者は指摘する。その危機感が本書を書いた動機だと、あとがきにある。

 

 幸いにも米国の今回の大統領選挙はその流れに逆らえたのですが、世界中い火種は残っています。とりあえず、僕はこのような傾向を理解しておきす。