新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

危機が生む政策起業イノベーション

 2019年発表の本書は、アジア・パシフィック・イニシャティブの創設者船橋洋一氏のシンクタンク論。冒頭、シンクタンクは世界的な危機(戦争や恐慌)を受けて、設立されたとある。

 

・WWⅠ ブルッキングズ、CFR

・WWⅡ RAND、CSIS

・冷戦 PIIE

 

 公正な政策提言をするために、多くのシンクタンクは非営利・中立だが、共和党(ヘリテージ)民主党(CAP)のように政党がバックにいるものも、経済界が発足させたもの(MGI、WEF)もある。

 

 米国では、政権中枢との「回転ドア」の先にシンクタンクがあって、新政権発足時には、シンクタンクから政権入りする人が多く、政権を離れる時はシンクタンクに戻る人も多い。次世代を見据えた政策研究(Think)と提言を行い、機会が来ればその提言を実施(Do)するわけだ。

 

        

 

 政策起業にあたっては、Think/Doのほかに自律性/応答性の立ち位置も問題になる。政府はDoに寄り、大学研究者は自律性に寄り、コンサルは応答性に寄る。その空白を埋めるのがシンクタンクである。

 

 日本でも企業(特に金融)グループが「○○総研」などの名でシンクタンクを持つが、中立・独立のものは少ない。シンクタンクの運営には、

 

・資金 広く浅くが理想的、クラウドファンディングのほか、休眠預金の活用や、政党交付金からの充当も考えられる。

・データ 政府によるオープンデータの促進、EBPM意識の拡大が重要

・人材 政府・民間間の流通により、Think/Do双方の知識ベースや経験をもった人材を育成すべし

 

 が欠かせないとある。

 

 米国には、民間の有意の人材を1年間ホワイトハウスで実務に就ける制度がある。これは日本政府の「任期付職員募集制度」などよりずっと実効性がある。基本的には、官民協力(PPP)して政策イノベーションを起こすには、シンクタンクの充実がカギということだと理解しました。