新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

新GDP3位の国のテレワーク

 GDPランキングで、ドイツが日本を抜いて3位になったと報じられている。明らかに円安の影響が大きく、本質的には日本の生産性(特に中小零細企業)が伸びていないことが原因と思われる。

 

 2021年発表の本書は、在独30余年のジャーナリスト熊谷徹氏の「ドイツでのテレワーク普及」レポート。主に「COVID-19」禍での変化が話題なのだが、生産性に関しては2019年の数字で、1時間あたりのGDPを示している。

 

・ドイツ $66.4

EU平均 $59.5

OECD平均 $54.5

・日本 $46.8

・韓国 $40.5

 

 という具合。当時は$1=110円だったとして、今のレートで換算すると$34.3。おおむねドイツの半分になってしまう。4位陥落もむべなるかなである。

 

        

 

 さて、本書ではドイツで急速にテレワークが進んだ要因を、

 

・もともと成果主義で、時間に縛られない文化がある

・2時間上の残業は禁止されているし、休暇も100%とる

・通勤時間の節約にもなるし、オフィス賃料も下げられる

・長距離の出張が減り、その経費が節減できる

・政府が法的規制(*1)をかけて、テレワークを促進させた

 

 と説明している。「COVID-19」以前もテレワークをしていた企業はあるが、デジタル環境(の個人整備)や頑迷な経営者の意識などが邪魔をしていた。それが一気に解き放たれたとある。また、製造現場のIoT化(インダストリ4.0)進展もプラス要因。しかし企業間格差はあって、日本同様99%以上が中小企業で国を支えているのに、デジタル化が遅れている。これについては、明確な改善策は書かれていない。行政を含めたデジタリゼーションから、零れ落ちる個人や零細企業、零細自治体のことも触れられていない。

 

 加えて、テレワークにともなうサイバーセキュリティ強化の話は皆無。もし何もしていないのなら、ロシアの格好の餌食である。生産性のところは参考になりましたが、もうひとつ食い足りないレポートでした。

 

*1:テレワークできないことを企業側が証明要、しない経営者には罰金も