2021年発表の本書は、日経編集委員前田昌孝氏の現代株式市場論。「COVID-19」禍も1年が過ぎたころの出版で、個人投資家(含む予備軍)のいくつかの疑問に答えようとした書である。「老後2,000万円問題」などもあり、30年間給料の上がらない日本の労働者にとって、株式市場は役に立つのかが主題。冒頭に曰く、
・2021年初頭に日経平均は3万円台に回復、しかし危うさもある
・資産形成の教科書に「3%のリターン」とあるが、本当に達成できるのか
・著名な投資家バフェット氏が日本株に回帰したというが、本当か
・ESG(環境・社会・企業統治)投資には死角がある
・日本の公的年金(GPIF)の運用は危なくて見ていられない
などと課題が並べてある。
これらは、ある意味当然の疑問だし、本書にある以下の指摘も間違ってはいない。
・投資信託は玉石混交、運用報酬/手数料がバカ高いものもある
・GPIFは賃上げ率より高いリターンを挙げているが、賃上げが低すぎるだけ
・GPIFには貸株(空売り用の原資)制限があるなど、制約が多い
・少額投資非課税制度(NISA)のリターンも3%目標だが、実態は▲2%
かつては「バフェット氏のような投資家が張ってきても、GPIFの逆張りで吹き飛ばせる」という話もあった。しかし相手は「制約」で出来ないと知っているから張っているのだ。岸田政権が倍増を薦めるNISAも、実績はこのような次第。まあ、現金で持っているリスクヘッジをした程度の「投資」である。
その他、株主優待や株主投票インフラの話、市場の変化の話(例:デジタル化!)もあるが、既知のことだし小ネタ。個人株主への注意事項を書きたかったのだろうが、関心ある人は上記のことくらいは知っている。関心ない人は買わない。ちなみに帯の「なぜ株高?」の答えは「各国がパンデミック対策でバラマキしてカネが余り、他に買うものがなかったから」でしょう。