新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

30年間放置されてきたカルト集団

 2023年発表の本書は、安倍元首相暗殺事件以後再び追及されることになった旧統一教会についてのレポート。対談しているのは、叔母が元信者で多額の献金をし、脱会させるのに苦労した経験を持つ漫画家小林よしのり氏と、30年前から同教会の闇を追い続けてきたジャーナリスト有田芳生氏の2人。

 

 同教会は、1980年代から霊感商法で多くの被害者を苦しめ、1992年には「合同結婚式」のように派手なセレモニーを行って、世間に注目されるようになった。メディアから糾弾されるのだが、その後に登場したより危険なカルト集団「オウム真理教」の陰でステルス行動に入る。対談者たちによれば、日本をステルス侵略し続けていたが、なぜか公安警察の追及が沙汰止みになったという。ひとつには「世界平和統一家庭連合」などと名称を変えた(*1)こともあったろうが、警察の追及を政治の力が阻んだとする見方も大きい。

 

        

 

 同教会の政界への接近は、少なくとも1980年代から始まり、自民党の多くの議員(ある議員によれば50人以上)が信者を秘書として雇用している。本書には、数名の議員の実名も揚げられていた。単に選挙のボランティアをしてくれていただけではないのだ。信者自身が国会議員選挙に出馬したこともある。地方議会では、何人もの信者議員が当選しているし、メディアに出る論客(これも実名入り)の中にも、明らかに教会と縁が深い人物がいるとある。

 

 対談者たちのように同教会を追及する人には、これらの論客が避難を浴びせるわけだ。その結果、官憲も動けず、メディアも委縮したまま、30年が過ぎたという。それが、一人の宗教二世の犯行で表に出てしまった。

 

 対談者の2人は、自民党憲法改正草案に同教会の意思が反映されていると危惧する。例えば、緊急事態条項新設、家族保護条項新設、政教分離条項削除などである。さて、同教会への追及、これだけ政界などに根を張った相手に対して、どこまでできるものでしょうか?

 

*1:なぜか文科省が認可してしまったが、時の大臣は安倍派幹部のS議員