新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

バーサ&ラム君初登場

 1939年発表の本書は、これまで「梟はまばたきしない」などを紹介した、E・S・ガードナーがA・A・フェア名義で書いた秘密探偵社所長バーサ・クールと、雇われ探偵からパートナーになるドナルド・ラムの初登場作品。本書以降30冊程書き継がれたシリーズの第一作にあたる。2人の紹介は(*1)を参照してもらうとして、本書には第一作らしく、パワフルなバーサと抜け目ないラム君の魅力が詰まっている。

 

 弁護士だったが知り合いと「殺人を犯しても罪に問われない法」を議論して、できる/できないの賭けになり、その件を懲罰会議にかけられて失職したラム君は、バーサの探偵社に採用される。最初の仕事は、汚職容疑を掛けられた男モーガンの妻サンドラからのもの。身を隠している彼を見つけて「離婚証書」を手渡すこと。居場所はサンドラの兄トムズがヒントを持っている。

 

        

 

 モーガンも官憲とは別に彼を追うギャングたちも、さまざまな手段を使って追跡/逃亡戦を展開している。そこに巻き込まれた形のラム君たちは、証書を手渡したもののモーガンが射殺されたことで窮地に陥る。サンドラの友人アルマを救うため、ラム君は「殺人を犯しても罪に問われない法」を実践することにした。

 

 カリフォルニア州アリゾナ州の境で、ラム君が仕掛ける自動車(小切手)詐欺は、何のことか全くわからない。ラム君は詐欺容疑で逮捕され、殺人容疑がかかっていることでカリフォルニアに移送されることになる。しかし殺人容疑で公判(屠所)に引き出されたラム君は、ここ一番の奇策を展開して法廷を騒然とさせる。

 

 ある種の完全犯罪トリックを、名探偵側が使うというシーンに度肝を抜かれたのが50年前。再読してみて、法廷シーン以外でもラム君のはしっこさが目立ちました。このシリーズ、改めて何冊か買って来たので楽しみにして読みますよ。

 

*1:ひよわだが抜け目のない羊 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)