新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

歓楽の街のラム君たち

 1941年発表の本書は、昨日「屠所の羊」を紹介したA・A・フェアの「バーサ・クール&ドナルド・ラムもの」。シリーズ第四作にあたる。小柄で腕っぷしはダメだが、元弁護士で法律(のウラ)に詳しく、機転が利くのがラム君。彼を雇った探偵事務所長のバーサは、巨漢の吝嗇中年女。ただ、本書はバーサが病院から退院するシーンで始まる。体重は160ポンドまで減り、医師からは「この体重を維持しなさい」と言われるのだが、ハナから言いつけを守る気などバーサにはない。

 

 病院は(なぜか)ソルトレークで、迎えに行ったラム君ともども、ロスへの帰り道に歓楽の街ラスベガスに寄ることになる。そこでのホワイトウェルという男からの依頼内容は、

 

        

 

・息子フィリップが結婚したいという女コーラが失踪した

・嫁にはしたくないが息子が不憫なので居所を捜して欲しい

・彼女が自ら身を引いた(隠した)という証拠を見つけるだけでもいい

 

 というもの。カネに目がくらんでバーサは1週間で見つけて見せるという。1週間以内に見つけられればボーナスが出るという言葉にのせられたわけ。しかしろくに裏取りもしないものだから、企みのある依頼だったり、トラブルに巻き込まれる話だったりする。最もひどい目に合うのはラム君だけだが。

 

 今回も御多分にもれず、コーラの行方を知るらしい女詐欺師に近づいたラム君は、彼女のマッチョなヒモにボコボコにされ、挙句は殺人容疑まで掛けられてしまう。窮地に陥った(はずの)ラム君の起死回生の一手は・・・。

 

 本筋ではないが、原題(Spill the Jackpot)にもあるようにスロットマシンからコインをせしめる詐欺の手口が詳しく述べられている。当時のコインは現在の100倍以上の値打ちがあっただろうから、上手くやれればリターンが大きい。

 

 ラム君、またも本当に悲惨なことになるけど、いつもニコニコ。見習うべきですよね。