新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日本の中では空気のような・・・

 2022年発表の本書は、日本の中にいると空気のように感じている「国籍」問題を取り上げた、早稲田大学国際学術院教授陳天璽氏の著作。著者自身30年ほど無国籍の状態だった。両親が台湾から太平洋戦争後横浜に引き揚げて来て台湾国籍だと思っていたら、日中国交正常化、台湾との断交で家族ぐるみ無国籍になってしまった。

 

 本書には20余りの家族の例を取り上げ、無国籍になってしまった経緯を示している。

 

満州国が無くなってしまった

ロヒンギャ難民だが、ミャンマーは彼を国民と見ていない

・各国の戸籍法の相違による、手続き上の問題

 

 などで、現在日本には1万人以上の無国籍者が、生活しているとある。一方で多重国籍を認めている国も少なくない。ハマスが人質に取った人の中には、イスラエル+1国の国籍を持った人も少なくなかった。

 

        

 

 日本は多重国籍を認めていないので、日本国籍とその他の国籍を持つ人は、22歳までにどちらかを選ぶことを義務づけられる。しかしある種のケースでは、結果として多重国籍を持つ日本人も出てきてしまう。例えば「蓮舫国籍事件(*1)」である。

 

 日本国籍ではないと、居住は可能でも年金や健康保険に入れなかったり、普通の一生を送ることが難しい。少なくとも、これほど国際結婚、海外での出産が増えている現状では、日本の国籍法第11条(*2)は時代遅れだとある。

 

 面白かったのは、2006年ころの河野太郎議員の活動。パレスチナ難民は日本の制度上無国籍なので、子供が生まれると日本国籍になってしまうとして、パレスチナを国と地方に定義するよう働きかけたとある。パレスチナ難民の子供を正しい国籍をという話にも聞こえるが、日本国籍の子供が成長して帰国し何かあってはいけないと考えたとしたら問題ではなかろうか?

 

 普段意識しなかった国籍のこと、問題があることは認識できました。

 

*1:ヒトのグローバリゼーション - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

*2:国籍法第11条 - Wikibooks