新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

二つの祖国を持った人からのエール

 2020年発表の本書は、台湾出身の「日本人」金美齢氏からの日本人へのエール。強硬な台湾独立派の論客で、日本人よりも(古来の)日本人らしい人である。1934年台北生まれ、1956年に来日し早稲田大学を修了、日本で英語教育に携わった。二重国籍を認めない日本と認める台湾を2つの祖国と考え、結局日本国籍を選んだ。子孫は日台混血だが、日本人として暮らしている。

 

 台湾の李登輝(日本名岩里政男)元総統や蔡英文総統、安倍元総理らに近く、中国共産党政権やそれにおもねる日本外務省のブラックリストに名前が載っているとある。日本の良いところを沢山知っていると言いながら、

 

・日本人の国家意識が希薄なのは悲劇

・日本人に足りないのは「覚悟」

 

 と手厳しい。本来今の日本に産まれたこと自身が幸運なのだから、愛国心を持って堂々と世界に対峙しろということ。

 

        

 

 戦後日本人の精神を骨抜きにしたのは、左派の政治家やメディアだという。同じ日台二重国籍の環境にあった民進党元代表蓮舫議員については、北京への留学もあって中国共産党の代弁者になってしまったとある。また社民党福島党首がかつてTV番組で「福島さんも意外と愛国者ですね」と問われて色を成して否定したことを挙げて、日本の左派の姿勢を糾弾している。

 

 今や「日本精神2.0」の時代との主張で、いかにグローバル化してもルーツとしての日本精神を忘れてはいけないという。英語教育にも一家言あって、まず日本語でちゃんと議論できないうちに英語を教えると「英語はペラペラでも話す内容もペラペラ」な人になるとある。

 

 台湾に日本が残してくれたのは、清潔・公正・信頼・勤勉・正直・規律・責任等の精神。例えば中国(本土)人の「爆買い」についても、安いからではなく信用しているからだとある。総じて日本人へのエールなのですが「この精神を今の日本人は忘れかけていませんか」という警告も含んでいるように思いました。