以前、台湾有事にあたっての米中戦争シミュレーション、渡部元陸自総監著「米中戦争~その時日本は」を紹介した。2017年出版とやや古い書だったが、作戦級のシミュレーションとしては充分勉強になった。
Air Sea Battle(ASB)はどう展開する? - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
ただ、当時とは各国の指導者が替わっている。中国、台湾、北朝鮮は同じだが、
米国:トランプ政権→バイデン政権
韓国:文政権→尹政権
日本:安倍政権→岸田政権
となった。特に米国、韓国の転換は、中国・北朝鮮にも顕著な影響を与えている。2021年発表の本書は、改憲派のジャーナリスト清水克彦氏が国際政治の視点で捉えた台湾海峡紛争の予測である。
本書の3/4は、各国の事情・状況を整理したもの。興味を惹いたのは、
・オバマ政権の対中無策が、習大人の覇道・軍拡路線を助長した
・トランプ政権は北朝鮮を宥和し中国に対したが、経済競争に留まった
ということくらい。習大人の台湾統一の野望は近く、以下のような形で始まりかねないという。
2)中台間の自由貿易協定を破棄し、台湾内の統一派に決起呼びかけ
3)演習とのカバーで戦力を動かし、重要なレーダー基地などを破壊
4)漁船団・海警局艦船・軍艦の順で台湾海峡を渡る
5)「米軍が先に攻撃してきた」と喧伝して部分的戦闘に突入
問題はその時日本が何が出来るかだが、筆者が自民党小野寺元防衛大臣に問うと、自衛隊が行動できるケースは、
・尖閣諸島など日本領土への攻撃
・日本有事と判断できるほどの台湾への攻撃
・それ以上の「存立危機事態」となったとき
最後のものは、例えば台湾海峡封鎖で日本のシーレーンが止められたような事態だろう。筆者は憲法9条で縛られていて自衛隊が十分戦えないことを、憲法改正で解消すべきと主張している。
しかし本書からさらに1年以上経ち、憲法改正はなくとも「闘える自衛隊」への道は開かれつつあります。そう、ロシアのウクライナ侵攻があったからですね。