新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

台湾海峡をめぐる仮説

 2022年発表の本書は、ジャーナリスト清水克彦氏の手になる台湾有事の背景と展望。筆者は軍事が専門ではないが、文化放送のMCを務めて人脈が広がり、多くのキーマンにインタビューして本書をまとめている。

 

 そもそも今の中国は、米国が育てた。ソ連に対応したり、日本の経済力に抗するため中国を経済が豊かな民主国家にしようとして、失敗している。今や習大人はプーチン(曲がりなりにも選挙で選らばれる)を上回る独裁者に成長、軍の近代化や拡大もめどが見えてきた。

 

2024年 台湾総統選挙、米国大統領選挙

2027年 人民解放軍結成100周年

2028年 中国のGDPは米国を抜く

2035年 中国軍の近代化が完了

2049年 中華人民共和国建国100周年

 

 アヘン戦争に始まる100年は日本を含む列強に侵略され、中国の苦難の時期だったが、次の100年で(覇権国としての)正常状態に戻したい意向だ。

 

        

 

 筆者は、尖閣諸島は台湾領と思っている中国は、台湾侵略の時には必ず尖閣も獲りに来るという。問題はそれに先立って嘉手納や横須賀の米軍基地を奇襲するかだが、その可能性は低いとある。しかし火ぶたが切られれば、日本国内の米軍基地はいったんカラになるともいう。軍人の家族などのことを考えれば適切な措置だが、日本人だけが取り残される公算もある。台湾から100kmほどしか離れていない与那国島などは、住民避難に苦労するだろう。

 

 もちろん、リアル侵攻以前にサイバー空間での前哨戦は始まり、フェィクニュースが飛び交う。その際、日本政府やメディアも正しい報道をする義務がある。多くの日本人が頼りにしている日米安保だが、本当のところ米軍が参戦するかは状況次第。台湾と尖閣、場合によっては与那国等を獲られて膠着状態になりかねない。

 

 本書はあくまで「仮説」、可能性のひとつでしかありませんが、こういう事態を意識しておく必要はあるでしょうね。