新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

私設特殊部隊<剣>登場

 近代軍事スリラーの大家トム・クランシーは、多くの共著者を活用した。死後も、マーク・グリーニーが<ジャック・ライアンもの>を書き続けてくれている。数多くの共著者の中で、本書(1997年発表)に始まる<剣>シリーズのマーティン・グリーンバーグは、僕が一番読んでいない人。以前シリーズ第二作の「南シナ海緊急出撃」だけは紹介したことがある。

 

 ヴェトナム戦争の英雄ロジャー・ゴーディアンは、軍事システム開発企業アップリンクを興して富豪になった男。社内に私設特殊部隊<剣>を創設し、国内外から選りすぐりの隊員を集め、独自開発の特殊兵器(非致死性のもの中心)も装備して対テロ作戦を行えるようにした。指揮官ヴィンスは、アップリンク社のリスク査定部長という表の顔も持っている。

 

        

 

 <剣>のデビューのきっかけは、ロシアの動乱。エリツィン大統領の急死で不安定になったかの国では、穀物不足による飢餓が発生(*1)していた。米国は援助を検討するのだが、西暦2000年のメモリアルな元旦にタイムズ・スクェアで大規模な爆弾テロが起き、千人近くが犠牲となった。米国の援助はロシア市場の開放を伴うもので、これに反対したロシアの勢力の犯行が疑われた。ロシア援助を止めろというアジを受けて、政権は窮地に立たされる。ゴーディアンは、ついに私設部隊<剣>に真相究明と、テロリスト捕縛を命じる。

 

 テロはロシアのマフィア、クルド系のテロリストなどが関わり合って起こしたもの。<剣>の情報収集部隊はテロに関わった人物を捉え、その犯行経緯を暴いてゆく。途中、ロシアのBTRなどが登場する戦闘シーンもあるが、クランシーの他のシリーズよりは抑えめ。グリーンバーグの本業はというと、編集者だった。

 

 それゆえか、ストーリーテリングや人物設定については優れたものがあるようです。しかし僕がクランシー作品に期待しているのは、国家間の陰謀とそれにまつわる大規模な軍事行動なのですがね・・・。

 

*1:スターリン時代にもよくあって、1932年には700万人が餓死(そのうち500万人はウクライナ人)している。