新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

1月20日の正午がデッドライン

 1980年発表の本書は、英国情報部の10年程在籍したテッド・オールビューリーのエスピオナージュ。20作以上の作品があり、TVドラマのシナリオ等も手掛けた人だという。本書は11作目、舞台は米国で大統領選挙の背景にあるソ連の陰謀を、SIS局員のマッケイとCIA局員のノーランらが阻もうとする話だ。

 

 11月初めに大統領選挙の投票が行われ、第一週には次期大統領(当選大統領)が決まる。そして1月20日の正午をもって、当選大統領は正式に大統領になる。マッケイはふとしたことから、共和党の大統領候補ローガン・パウエルの選挙参謀デンプシーに、共産党員としてパリのデモで逮捕された経歴があることを知る。もしデンプシーだけでなくパウエルにまでソ連共産党の手が伸びているとすれば、米国の危機になり得る。

 

        

 

 SISの連絡を受けたCIAハーパー長官は、ノーランらに調査を命じる。マッケイもCIAに出向して協力することに。パウエルは一介のコンサルタントだったが、大手電機メーカーのストライキを治めたことから知事選挙を勝ち抜き、いくつもの「幸運」に恵まれて共和党の大統領候補を射止めた。ノーランらはそれらの「幸運」は、ソ連のエージェントである宝石商クレップを資金源とした、デンプシーらの工作ではと疑う。

 

 対ソ連宥和や軍縮を唱えたパウエルは、民主党の現職を破って当選。正式に就任する1月20日の正午までに残された時間は66日しかない!誰がそんな事態(ソ連の支援を受けた大統領誕生)など信じてくれるのか?ハーパーは悩んだ末、最高裁長官と下院議長にだけ危機を訴える。

 

 面白い設定で始まった本書ですが、解決はちょっと期待外れ。竜頭蛇尾気味でしたね。本書発表から30余年、本当にロシアに支援(何度か破産しながらロシア資金で再生、不動産の借主にオリガルヒ大勢)下の大統領が登場(*1)しました。その意味では先見性ある作品でしたね。

 

*1:無自覚の工作員 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)