今年のNHK大河ドラマの舞台は「源氏物語」なのだそうだ。そういえば、歴史好き読書好きの僕だが「源氏物語」は読んでいないし、あらすじさえ知らない。だからというわけではないが、Book-offでふと手に取ったのが本書(1993年発表)。弁護士作家和久峻三作「赤かぶ検事シリーズ」の1冊、柊検事が長野地検松本支部勤務の時の作品である。
松本に本店を置く商社「小野物産」専務小野春洋は、社長である洋司の息子。遊び人で、女の出入りが激しいことから<光源氏>と呼ばれている。50歳を越えて、今の妻里世子(26歳)が美女なのにも関わらず芸妓の愛人などがいる。家業に無関心なので、洋司は80歳を過ぎても引退できない。
春洋夫妻は京都への旅行に出発するが、新幹線車中の電話に呼び出され「落葉神社」に来いと言われる。行ってみると2~3人の男に襲われ、春洋は誘拐されてしまった。
たまたま(!)京都に出張中だった相棒行天警部補から連絡を受けた赤かぶ検事は、里世子が妻の姪だったこともあり事件に介入する。やがて6,000万円の身代金要求が入り、洋司が用意した現金をバッグに詰めた里世子は「道風神社」に向かうが、ここでの受け渡しは失敗。次に向かった平安神宮で、ついに容疑者が現れバッグを持ち逃げしようとするが、バッグを置いて逃走してしまった。しかし、
・バッグの中から現金は消えていて
・容疑者と思しき男が、刺殺体で発見される
ことになる。小野家の人達とその周辺に多くの容疑者が現れるが、その人間関係は「源氏物語」の一節に酷似していた。
<光源氏>に恋人<女三ノ宮>を奪われた<柏木>が、姉にあたる<女二ノ宮(*1)>と夫婦になる話など、愛憎渦巻く世界を垣間見ました。「源氏物語」の一端を知ることができただけで十分です。あー、こんな(愛憎)話ばかりとしたら大河ドラマはどうなるのでしょうかね?
*1:落葉神社が<女二ノ宮>ゆかりの神社