新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

内政干渉が許される分野

 2022年発表の本書は、スタンフォード大学社会学部教授筒井清輝氏の「普遍的人権」の入門書。サントリー学芸賞石橋湛山賞を受賞した書である。著者は政治社会学が専門で、多くの学生と人権に関する議論をし、各国で人権侵害に抵抗した政治家や活動家を招いて講義をしてもらうなどした結果をまとめたのが本書である。

 

 奴隷制度の廃止や女性参政権の確立、人種・宗教・民族による差別禁止などが、20世紀になると徐々に広まってきた。WWⅡ後国連が発足し、人権委員会など国際的な人権擁護の体制が整備された。1948年のジェノサイド(*1)条約など、数々の国際条約・規範が、種々の抵抗を乗り越えて成立してきた。その目指すところは「人が生まれながらに持つ普遍的権利としての人権」を、世界中で維持すること。

 

        

 

 一般に国際機関だとしても内政干渉は許されないが、こと普遍的人権の侵害に関しては、かなり踏み込んだ内政干渉が認められるというのが現状の考え方。人権侵害が疑われれば「口出し以上、介入未満」の干渉ができるということだ。

 

 冷戦期には米国がソ連民主化運動圧殺を非難し、ソ連は米国内の人種差別を非難した。しかしNGOアムネスティヒューマン・ライツ・ウォッチ)が活躍して世界全体の人権意識は高まる。冷戦が終わると地域紛争が活発化し、旧ユーゴやルワンダなどで大量の犠牲者が出た。

 

 21世紀は米国の「対テロ戦争」で幕が開き、グアンタナモ刑務所での拷問などが問題となった。ダルフール紛争やシリア内戦、ミャンマーのクーデターなどもあり、現在に至っている。

 

 特に女性に対してはブルカの着用を義務付ける宗教上の規範があったり、女児の割礼という民族の風習があったりして、人権に反する行為がまだまだ正当化されるところがある。まだ課題は多く残るものの、この100年あまりで広まってきた人権意識、大事にしたいと思います。

 

*1:種族の殺害という意味の造語