新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日本に自律と核武装を勧める

 本書はフランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド氏が、ウクライナ紛争後の世界についてインタビューに応えたもの。侵攻後1ヵ月前後に2度受けたインタビューが基になっていて、他の2つの記事はこれらを補完する目的で、2017年と21年のものを再掲している。要約すると、

 

1)紛争の責任は米国と西欧にある

 プーチン先生の擁護に見える発言だが、そもそもウクライナという独立国は過去になく、20世紀最大の地政学的悲劇(ソ連崩壊)で出来ただけとある。ウクライナ領内にはロシア人が多い地域もあり、親ロのヤヌコビッチ政権がクーデターで親NATO派に倒されると、彼らが危険になった。そこで2014年のクリミア侵攻をロシアはした。NATOの東方拡大が、今回の紛争の引き金。

 

        

 

2)米国は事実上参戦しているが、政治的には安定していない

 米国人が直接闘い死傷していないだけで、この紛争はすでに米ロの対決でWWⅢと呼ぶべきものになった。ロシアは経済制裁程度では崩れないし、むしろエネルギーをロシアに依存している西欧の方が先に参るだろう。米国は強大だが、政治的にどう転ぶか分からない。

 

3)中国はロシアを支え続けるが、日本は米国依存を見直した方がいい

 ロシアが倒れれば中国は独力で米国に対抗しなくてはならないので、支えることになる。米国&NATOの連携に日本が近づくのは、米国の不安定さからも危険。いちはやく自律(米中の間で中立の意か?)した国になるべきで、そのためには核武装が必要。

 

 と、米国、グローバル化新自由主義が大嫌いなトッド先生らしい言説だが、米国は民主主義というより富裕層による金権政治だという指摘はある程度あたっている。ロシアの制裁としてオリガルヒを締めあげたが、彼らは政治はしていないので意味のないことだとある。

 

 面白かったのは家父長が強く大家族な民族ほど、共産化しやすいと言っていること。もう核家族になってしまった中国の共産主義崩壊が近いということでしょうかね?