新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

新興国・小国から見た中国

 2021年発表の本書は、ルポライター安田峰俊氏が(「COVID-19」禍で海外取材が出来なくなって)これまでの取材データや海外ネットワークを使ってまとめたもの。冒頭各国の対中国感情の係数が示してある。日本は尖閣事件などあって2010年代初頭から係数が悪化、約8割の人が悪感情を持っていた。しかし他の主要国は(米国の6割を除いて)おおむね係数は5割を越えていない。しかし習大人の強権姿勢が見えて来て、「COVID-19」の発生源だったこともあって一様に係数が増えた。

 

8割越え 日本、オーストラリア、スウェーデン

7割越え 米国、英国、ドイツ、オランダ、韓国、カナダ、フランス

6割越え スペイン、イタリア

 

 本書では12ヵ国の中国との関係について詳述していて、多くが新興国や小国だ。通常ニュースで知ることができない情報が満載だった。いくつか興味深い対中国関係を紹介しよう。

 

        

 

イスラエル

 共にサイバー国家だが、技術に優れても市場が小さいイスラエルと、大国で補完技術が欲しい中国はいいパートナー。しかし、伝統ある開封地区のユダヤコミュニティを中国が排斥したことが、今後の火種になりかねない。

 

◇ナイジェリア

 中国からの資金や人材で豊かになりつつあるが、庶民同士はどちらの国でも反目している。黒人は中国では嫌われ者だし、逆も政府高官や富裕層を除き同じだ。100億ドル近い借款も(スリランカの例を見れば)問題である。

 

カザフスタン

 国内にドウンガン(東干)人という漢族系の住民がいて、メジャーなカザフ族と紛争が起きている。また新疆にはウイグル族に次いでカザフ族が多く、これらにも政府の圧力がかかっている。しかし「一帯一路」の最初の通過国であるこの国は、中国にとって貴重な相手。

 

エチオピア

 WHOテドロス事務局長の母国、140億ドルほどの最大の借款国でもある。インフラ整備は進んでいるものの、庶民が豊かになっているかどうかは不明。

 

 特に一帯一路の国については、政府の対中国感情はいい。しかし庶民ベースでは中国人排斥の気配もある。また中国国内では異民族・宗教の排斥や弾圧があり、母国に逃げ帰った人たちからクチコミで噂が広がっている。

 

 中国が「内政不干渉」をタテに、非民主的国家にも支援を行っている状況が良く分かりました。しかし日本のODA中国企業が受注し、現地では中国の支援と見られているという話は困りますね。