「新選組」についてはこれまで、司馬遼太郎、池波正太郎の作品を紹介している。これらはいずれも小説だが、本書は1928年に作家子母澤寛が発表した実録である。作者は本書に続き「新選組異聞」「新選組物語」を発表、「新選組三部作」とした。この時代には、幕末の経験者が生きていたり、口伝が遺されていたりした。作者は、巷間の噂・俗説を追い、実際に事件があった場所を訪れてもいる。
実際に新選組に所属していた人物として、
・篠原泰之進 諸士取調役、柔術師範、伊東甲子太郎と共に御陵衛士として分離
などの口伝が本書にはちりばめられている。司馬遼太郎「新選組血風録」が気に入って、中学生時代に本書も買ったのだが、漢字カナ混じり文や旧かなづかいの文書の引用も多く、中学生の手には余った。ロクに読まずに本棚行きになったものだ。
50年経って、BOOKOFFで見つけて、今度は最後まで読んだ。清川八郎が「浪士隊」を江戸で集めるところから始まり、芹沢鴨・近藤勇両派13名が「壬生浪士」となって京都に残り「新選組」となった。さらに池田屋の変・蛤御門の変・鳥羽伏見の戦いから甲陽鎮撫隊の崩壊、下総流山で近藤勇が刑死するところまで、作者はいろいろな文書やインタビューを通じてドキュメンタリーとしてまとめている。
中学生の頃は、戦術・戦闘級のシーンを期待して買ったのだが、純粋な歴史だったので飽きてしまっていた。それでも、今となっては脚色されない「真実の新選組とその隊士たち」を知ることができる貴重な「一次資料」である。
それにしても、多くの志士たち隊士たちが、殺されたり自決に追い込まれたりしている。血なまぐさい話なのだが、実録ならではの迫力を感じましたね。