2019年発表の本書は、ジャーナリスト安田浩一氏の「団地は移民のゲートウェイ」との主張を現地取材を重ねて裏付けたもの。高度成長期に近代的な住宅として整備された「団地」だが、50年以上経って老朽化が進み住民も高齢化し、外国人比率も高まった。取り上げられているのは、例えばこの3団地。
孤独死が日常化しているが、外国人も多い。一般に身寄りからの連絡はない。
まず中国人が多くなり、今は多民族化している。メディアやネトウヨは犯罪の巣窟などと報じるが、これは誇張であり日本人も含めた共生も進んで(*1)いる。
・広島市基町高層アパート
戦後「原爆スラム」というバラック街があり、これを建て替えたのだが、大陸からの引揚者・残留孤児・日系人ら行き所のない人が増えている。
確かに排斥され、仕事に就けず、貧しい暮らしをしている人が多いのだが、決して一部メディアの言うように「悪の巣窟」になっているわけではない。ゴミの出し方などでトラブルはあるが、誇張されて伝わることが多いと筆者は言う。外国人は同じ言葉を話し、文化を持つ人たちが小さな集まりを作って暮らしている。日本語を学ぶ機会や、就職・就学のあっせん、協同組合のような組織もある。
筆者は「団地は移民のゲートウェイ」の主張を確認するため、パリと近郊の団地を取材している。そこでは、
・パリ3区、19区は富裕な中国人が棲むが、13区は同じ中国人でも貧困層
・最近共産党政権を逃れた人たちが、つてを頼って流れてくる
・パリ近郊には90以上の国籍を持つ人たちが暮らす団地がいくつかある
・従来の商店は無くなった(逃げた)が、協同組合的にマーケットを開いている
・種々の教室もあり、フランス語講座が一番人気
・メディアが過激なシーンを狙うので、カメラにはセンシティブ
・パリ市内で路上生活をする同郷の人たちに支援の手も伸ばしている
のだ。移民先進国フランスの例に学べば、確かに筆者の主張は正しいですね。でも日本では本当にどうするのでしょう?