新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

生産性向上は人を不幸にする

 昨日加谷珪一氏の「スタグフレーション」で、賃金が上がらず物価が上がる経済危機の中では、生産性を上げるしかないとの主張を紹介したのだが、2023年発表の本書は、それとは真逆の主張をしている。著者の森永卓郎氏は獨協大学教授、TVでもおなじみの論客で、僕が師事する竹中平蔵教授を厳しくなじる人でもある。

 

 れいわ新選組の山本代表と同様、財政均衡策には真向から反対。本書でも「日本政府の借金はわずか1,000兆円、3,000兆円までは大丈夫」と言っている。その他、こんな驚くような主張が並んでいた。

 

・消費税はゼロでも、財政は回る

スタグフレーションという言葉は死語

・生産性向上は人(労働者)を不幸にする

 

 消費税はまず、税の直間比率の是正を目的に導入が検討された。その結果直間比率は普通の先進国並みになったが、以後の増税をにらんで(また減税拒否の為)社会福祉の財源とすることに位置付けを変えている。

 

        

 

 このことは事実だが、筆者は「消費税は消費者が負担する」と言っているのは、事実と異なる。この本質は「売上税」で、事業者が負担するものだ。

 

 種々の控除を廃止したりして国民負担率が上昇しているのは確かで、すでに48%まで来た。ただこれでも米国を除くと、欧州各国よりは低い(フランスなどは67%)。ただ、欧州各国は教育無償化など、給付も充実しているとある。

 

 まるまる1章を「住民税非課税世帯は最強の武器」という内容に充てていて、世帯年収200万円以下になれば、かくもバラ色のケアがあると主張している。自らも食料や電力を自家生産して、経済危機になっても生きていける生活を実践している。というのは、世界的なバブル崩壊が近く直近のインフレなどはすぐに収まり、デフレ時代がくると予想しているから。

 

 経済成長させるのではなく、いかにうまく給付を受けるかというような書でした。生産性向上が悪いことだとの意見は、とても珍しいと思います。