新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

デジタルロビーイングの歴史に学ぶ

 本書は先月発売になったばかりのもの。渡辺弘美氏とは15年程前に知り合い、業界団体の場でデジタル政策を論じてきた縁で、新刊書を送っていただいた。筆者は旧通産省で産業政策を21年、アマゾン合同会社でロビーイング15年の経験を持ち、現在は公共政策を向上させる会社の代表をされている。

 

 表題にある「Techlash」とは、巨大ITに対する反発のこと。米国でも既存産業(例:書店)を廃業に追い込む、配達員などに過重な労働を強いている、偽造品売買の温床だなどと非難されるし、日本では(国境を越えるセールスゆえ)納税していないとも批判されてきた。

 

 筆者らはこのような批判に対し事実を説明して理解してもらうだけでなく、アナログ時代のまま改訂されない規定と闘う必要があった。本書には、実際に筆者が行った8つのデジタルロビーイングの例が示されている。

 

        

 

1)置き配を社会的に受容してもらう

2)デジタルプラットフォーマーの透明性に関する議論

3)試験・研究用機器の運用に関する電波規制の緩和

4)海外からのサービス(特に電子書籍販売)に関する消費税論

5)欧州の「The Goods Package」法案に対する諸外国からの意見

6)取引デジタルプラットフォーマー消費者保護法に関する議論

7)金融機関のクラウド利用を可能とするための環境作り

8)電子書籍に関連した著作権問題への対応

 

 同社がクラウドサービス含めて幅広い事業を日本でも展開しているため、2つの同じ分野はないロビーイングである。いずれも難しい判断や、理解を求めるための多大の努力を必要としたケースだが、筆者は同社の社是とも言える「リーダーシップ・プリンシプル(*1)」に則ってこれらの課題に取り組んだとある。

 

 懐かしい人からの便り、僕も本書にいう「内資系テック企業のロビイスト」のはしくれとして、嬉しく読ませてもらいました。これからデジタルロビーイングを担ってもらう人たちの参考書になると思います。

 

*1:リーダーシップ・プリンシプル - About Amazon | Japan