2018年発表の本書は、毎日新聞記者で福島第一原発事故のその後を取材し続けている日野行介氏が「21世紀最悪の公共事業」の実態を綴ったもの。福島県を中心に広範囲に放射性物質が散布された事故で、その除染のため2016年度までで2.6兆円とのべ3,000万人の従事者を必要とした。
山林が多い地肌を削り、その汚染土をフレコンバッグに詰め、中間貯蔵施設に置く。いずれ「福島県外での最終処分」をするという約束で・・・。その過程で、さまざまな問題が生じた。
・取り出し忘れたフレコンバッグの上に新築住戸を建てた人
・基準値以下に除染すると公約して当選しながら守らなかった市長
・おざなりの除染作業をし、汚染土を正しく扱わなかった作業員
・安全/危険の基準値を巡って議事録の一部を削除した中央官庁
・原発周辺の土地に中間貯蔵された汚染土の30年後を憂慮する地権者
除染を計画したり実践した関係者の誰もが、これらは無理なことだと分かっていた。現場の作業員も含めて「誰のため、何のためにやっているのか」が分からなかった。政治家が勇気をもって真実を語り、帰還できないことを示すべきだったのだろう。自公時代の石原環境大臣の「要はカネメでしょ」発言が、一番正直だった。
別ブログでは今回の能登半島地震で、
・誰も責任をとらない形での地方切り捨てが起きる
・20年後消滅する地域に多額の税金を投入すべきか
などの意見がある(*1)ことも紹介した。本件に関しても、誰も責任をとらずに事態が推移する公算が高い。確かに政治家(民主党政権後の自公政権、自治体の首長)が真実を語らなかったゆえの歪みではある。しかし、誰か責任をとれることだったのかも、考えなくてはならないでしょう。