新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

パートナーになったラム君

 1941年発表の本書は、以前「屠所の羊」や「大当たりをあてろ」を紹介した、A・A・フェア(昨日紹介したE・S・ガードナーの別名)の「バーサ&ラム君シリーズ」。小柄で頼りなさげだが、頭の切れは抜群のドナルド・ラム。女丈夫バーサ・クールの調査会社に雇われて、機転の効いた調査員となっている。

 

 バーサは何かの病気をしたようで「大当たり・・・」の巻で体重が160ポンド(*1)にまで減ってしまった。吝嗇極まる彼女だが、たまには息抜きをとラム君を従え海釣りに出かけた。そこで富裕な医師のデヴァレストから、盗まれた妻の宝石箱を捜してくれないかと依頼される。楽な仕事とバーサはラム君を派遣するのだが、調査を始めたばかりに医師がガレージで死んでしまった。排気ガスを吸っての一酸化炭素中毒である。

 

        


 医師の夫人は、夫の生命保険は死亡時4万ドル、事故死だと倍額なので8万ドルと思っている。ラム君は、

 

・保険契約は「死因が事故による」場合に倍になるとある

・過失等での事故死は上記の条件にあたらない

 

 と説明し、訴訟は可能だが当面は4万ドルしかもらえないという。ただ法律の知識だけでなく、ラム君は本当にはしっこい。姿を消した娘を翌朝には見つけるし、運転手の男の過去を調べて巧みに操る。ペリー・メイスンが1話に一度見せる冴え(*2)を、ラム君は数回/話やってのける。

 

 デヴァレスト未亡人の周りには、甥や姪、使用人、弁護士や主治医などの他、南米からデヴァレストに借りた金を返しに来たという怪しい男まで現れて、みんな一癖ありそう。そんな中、ラム君自身にも殺人容疑がかかり、さらには毒まで盛られてしまう。

 

 本件の途中で、ラム君は小さな叛乱を起こし「パートナーにしてくれなければ辞める」とバーサを脅します。これまでの実績もあって、バーサもやむなく呑んでくれました。ラム君、おめでとう。

 

*1:ネロ・ウルフの半分強である

*2:時には非合法の取引も