1993年発表の本書は、スー・グラフトンの「キンジー・ミルホーンもの」の第10作。アルファベットは"J"となる。長く間借りし、仕事も請け負っていたカリフォルニア信用保険会社の新しい社長ゴードン・タイタスとはソリが合わず、キンジーは新しくキングマン&アイヴズ法律事務所の一角にオフィスを構えた。もう信用保険会社の仕事は来ないと思っていたのだが、キンジーとは旧知の副社長マックが、タイタスと対立しながらも仕事を持ってきてくれた。
それは5年前に遺書を残して失踪し、先日ようやく死亡と判断されて信用保険会社が保険金を支払った男の事件。その男ウェンデル・ジャフィが、メキシコの街で目撃されたという。それを確認してくれれば、保険金を取り戻せるとマックはいう。
その街で数日調査したキンジーは、ウェンデルらしき男がレティーナ・ハフという女の夫として暮らしていることを知る。ウェンデルにはカリフォルニアに妻と2人の息子がいたが、極貧にあえぎ次男はぐれて刑務所に入っている。保険金50万ドルは、妻たちに干天の慈雨だったのだ。
実はウェンデルはネズミ講詐欺の容疑者で、数百万ドルのカネが被害者のもとに戻っていない。さらに次男が脱獄に成功、ウェンデルは次男に会いにカリフォルニアに戻っているらしい。キンジーは妻や長男に聞き込みをかけるが、2人の行方は知らないと彼女らはいう。錯綜する事件の中で、キンジーはついに次男をみつけ、ウェンデルにも迫るのだが、車を故障させられ暗闇から銃撃を受けてしまう。
いつものように矜持を持って事件解決にあたるキンジーの前に、突然従兄弟たちが現れる。孤児だったはずの彼女だが、祖母が生きていたらしく従兄弟も数人いたのだ。
NCISなども数シーズン過ぎると、登場人物の過去を描き始めます。このシリーズも10作目にしてついにキンジーのルーツの手掛かりが出ました。さて、それが今後どう展開するでしょうか。