新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

インド生まれの女、50年の生涯

 1994年発表の本書は、先月デビュー作「警視の休暇」を紹介したデボラ・クロンビーの第二作。一人暮らしのエリート警視ダンカン・キンケイドと、シングルマザー巡査部長ジェマ・ジェイムズのコンビが主人公だ。

 

 ダンカンは小規模なアパートで、気ままな独り暮らし。それでも同じアパートの隣人たちとの交流はあり、1フロア下の階に住む50歳がらみの女性ジャスミンのことは気にかけていた。というのも彼女が末期がんで、寿命が尽きようとしていたからだ。慰めになればと彼女の好きな花を買って帰ったダンカンは、彼女を訪ねてきた友人メグと一緒に彼女の死体を発見する。

 

 メグは彼女から自殺を助けてくれと言われていて、昨日それをきっぱり断ったばかり。彼女もそれを受け入れたはずなのに・・・。ただダンカンの目には、ジャスミンの死は自殺ではないと映った。念のため司法解剖を頼むと、死体から大量のモルヒネが見つかる。また、彼女に多額の保険金が掛けられていたこともわかり、殺人の可能性も出てきた。

 

        

 

 アパートの住人や通いの看護婦、唯一の肉親である弟らに遺産や保険金の遺贈があり、誰もに容疑がある。手掛かりはジャスミンの過去にあると思われた。インドで生まれ、両親とも死に別れて苦難の道を歩んできたジャスミン。ダンカンはジェマの助けを借りて、ジャスミンが遺した膨大な日記を読み調査を始める。

 

 30年前の英国。医療関係者の過酷な労働環境や、高い住宅ローン金利などは現在と変わらない。頻繁にロンドンや周辺知育の地名・通り名などが出てくるが、土地勘がないので実感がわかないのが寂しい。

 

 前作ではあまり読者に知らされていなかった、ダンカンやジェマの私生活が紹介される。ジェマの息子トビーは2歳になるが手のかかる子供。彼女は捜査と子育ての両立に奮闘している。その上、別れた夫ロブは養育費を送ってこなくなってしまった。

 

 このシリーズ、重厚で面白いのですが、3~6冊目が手に入りません。方々で探してみることにします。