新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

狙われたアップリンク社の宇宙開発

 1999年発表の本書は、トム・クランシー&マーティン・グリーンバーグの<剣>シリーズの第三作。軍事システム開発会社アップリンク社の私設部隊<剣>の名前の由来は、アレキサンダー大王がゴルディアスの結び目を剣で断ち切ったとする故事にちなんでいる。ちなみに同社のCEOの名前は、ロジャー・ゴーディアン。

 

 アップリンク社は宇宙開発も手掛けていて、今回はスペースシャトルの打ち上げにも関与していた。しかしケネディ宇宙センターからのシャトル打ち上げは、失敗に終わる。何者かが破壊工作をした可能性も捨てきれず調査が続くうち、今度はブラジルにある同社の宇宙ステーション(ISS)の開発製造拠点が攻撃を受けた。

 

 HAHO(*1)を使って敷地内に潜入してきた敵の練度が高く、警備責任者ティボドーらの奮戦で撃退はしたものの、複数の警備員に犠牲が出てティボドーも生死の境をさまよう。攻撃側はプロの傭兵だが、防衛側の<剣>のメンバーは警備ロボットなどのハイテク兵器を使って防戦する。このあたり20世紀の作品としては、SFに近いかもしれない。

 

        

 

 回復途上のティボドーと並んで<剣>の実働責任者として雇われたのが、元SEALsのリック。警官を辞めてウニ漁の漁師をしていたところをスカウトされるが、敵対する犯罪組織から暗殺されかかる。離れたところから電磁パルスを送って破壊工作をする犯罪組織との対決は、カザフスタンの地になる。

 

 ISSの開発運用は米露の協力で行われているのだが、犯罪組織はこの計画を利用して強大な力を得る作戦を実行しようとしていた。そのために邪魔になるのがアップリンク社と<剣>だった。

 

 カザフスタンでの戦闘シーンは、ブラジルでのそれを上回る迫力。オスプレイはじめ最新兵器が続々登場して、腕が立ち綿密な計略を練った傭兵部隊と正面衝突する。ただ、他のクランシーのシリーズほどの愛着は湧きませんね。アップリンク社そのものが、ちょっと現実離れしているような気がします。

 

*1:高高度降下高高度開傘という高度なパラシュート降下手法