新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日米戦最良の戦略(後編)

 ミッドウェイを占領したとして、問題になるのはその基地維持のための補給である。ミッドウェイに一式陸攻などを配備すればハワイ・オアフ島は空襲圏内に入る。これを護衛する長距離戦闘機(零式艦上戦闘機)も日本海軍にはあった。

 
 しかし一方、オアフ島には米軍の航空基地が一杯ある。空の要塞B-17始めミッドウェイ基地に対する脅威は極めて大きい。また補給船団は空襲だけではなく、新鋭ガトー級を始めとする潜水艦攻撃の好餌になってしまう。史実で「飢島」と呼ばれたガダルカナル島よりずっと小さい上に、密林など身を隠すところもないのがミッドウェイ環礁の泣き所である。

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 第二巻ではミッドウェイ守備隊への大規模補給を連合艦隊の主力で護衛し、米軍主力艦隊を誘い出して第二次ミッドウェイ海戦が生起する。前回同様全戦力を集中した帝国海軍は、犠牲を払いながらも米軍空母を全滅させ、襲い掛かる米軍の新鋭戦艦群(サウスダコタノースカロライナ・ワシントン)を迎え撃って撃破する。
 
 それでもミッドウェイ基地の維持は困難で、第三巻で大本営はミッドウェイの撤収と同時にハワイ・オアフ島の無力化を意図した「最後の作戦」を決行する。新鋭エセックス級・インデペンデンス級が就役していない中、航空母艦をすべて失った米軍であるが、オアフ島は不沈空母である。帝国海軍とオアフ島航空戦力が潰しあった後、米海軍の戦艦6隻、帝国海軍戦艦7隻が撃ち合うことになる。横山信義得意のシーンではあるが、相変わらず迫力がある。加えて、本シリーズの陰の主人公である重巡洋艦「摩耶」の活躍も見逃せない。
 
 第二巻の「大和」対サウスダコタノースカロライナ・ワシントンや、第三巻の「武蔵」対インディアナ他の闘いはヤマト級戦艦が本来果たすべきだった役割である。結果として勝とうが敗れようが、そのミッションを果たしただけで本望だっただろうと作者は思っている。
 
 多大な戦果を得ながらほぼ再起不能の犠牲を払い、帝国海軍は米国との講和の道を見出す。シミュレーションゲームでも(何回もやってみたが)、フィリピン・インドネシアシンガポール等には目もくれず直線的にウェーキ・ミッドウェイ・オアフへ殺到し続けることしか勝機は得られないと思う。
 
 所詮70余年後の「あと知恵」ですけどね。