新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日本の軍備への教訓

 防衛省の概算要求は史上最高額になった。米国からのイージスアショアをはじめとする装備購入が多いのを、問題視する人たちもいる。一方で自衛隊員の充足率は低いままで、定年を延ばさないと最低限の要員も確保できないともいう。
 
 北朝鮮の非核化など幻想だと思うし、中国の海洋進出は止まるはずはない。ロシアまで過去最大規模の演習を極東でやるという。最も不安なのは、米国の政権の不透明さだ。シリアに突然攻撃を行ったり、イランと断交せよと各国に迫ったり、パレスチナへの支援を打ち切ったり、中国には貿易戦争を仕掛けてWTOからの離脱をほのめかしたりする。

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 東アジアから東南アジアにかけての各国は、正直不安にかられていると思う。この不安感、1930年代の欧州に近いような気もしたので、この本を引っ張り出してもう一度読んでみた。本書は第一次世界大戦前から、第二次世界大戦まで、ポーランドバルト三国ギリシアユーゴスラビアベネルクス三国、デンマークらの国がどういう状況にあり、どうしたかを記したものである。
 
 ロシアとドイツと言う大国にはさまれているポーランドは、110万人という大陸軍を持ちながら同程度の規模のドイツ軍の侵攻に2週間ともたなかった。装備が古すぎたのが原因で、中にはドイツ戦車隊に騎兵隊が突撃するという冗談のような戦いもあった。ベルギーも60万人の陸軍を持っていたが、ほぼ抵抗ができないまま降伏した。
 
 最初から戦争を放棄していた国もある。デンマークは6,600の陸軍兵士しかおらず、ドイツ軍は無人の野を行くごとくこの国を占領した。これは国内政治での左派の主張「弱い防衛力が中立を守る」を容れたかららしい。歴史は人類への普遍的な教師である。ポーランド以下ここに名前の挙がった国はいずれも戦火にまきこまれたが、小規模ながら強力な戦力をもっていたスイスとスウェーデンは中立を貫いた。 
 
 中国・ロシア・米国という軍事大国に挟まれた形の、日本・韓国・台湾は、本書にいう「弱小国」そのものと考えられる。さて日本はどうするべきか、憲法改正もからむので国会だけでなくいろいろな所で議論が高まることを期待します。