新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

陸の王者、1910~1945

 光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「戦車戦」である。「戦車」でないのは、戦車と言うものを支える技術や装備についてがメインではなく、戦場で戦車がどう使われたのかが中心になっているから。個別の戦車については、別ブログでアバロンヒルの精密陸戦ゲーム「Advanced Squad Leader」の戦車コマで紹介しているから、細かな点については本稿では取り上げない。下記が日本戦車の例。

 

突撃!日の丸戦車隊 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

 

 機関銃という兵器が戦場を掃射するようになり、トーチカという防御拠点が立てこもる兵士を守るようになると、攻撃側は全く不利となった。第一次世界大戦が「座り込んだ戦争」の様相を呈したのは、これが理由。そこで、攻撃する歩兵を掃射から守り、トーチカを破砕できる兵器が求められた。それが戦車である。機関銃弾をハネ返す装甲を持ち、ベトンの固まりを撃ち破れる砲撃力を持ったものだ。

 

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 第二次世界大戦になっても、例えば英国陸軍は「歩兵戦車」という低速・重装甲の戦車を多数保有し、開発も続けていた。しかし戦車を倒せるものとしての戦車も考えられ、歩兵や固定拠点用の榴弾砲ではなく徹甲弾を撃てる対戦車砲を砲塔に載せるようになった。正面切っての撃ち合いだとお互い致命傷を与えられないので、装甲の薄い側面や弱点である背面を狙えるよう、回り込む機動力も求められた。

 

 本書では第一次世界大戦からのいろいろな「戦車戦」を取り上げて解説しているが、やはりメインは第二次世界大戦、しかも欧州戦線だ。太平洋戦線では、戦車戦らしきものはほとんど記録されていない。本書の戦例を挙げると、

 

ポーランド侵攻作戦(1939)

ベネルクス三国&フランス電撃戦(1940)

北アフリカ戦線(1941~1943)

・ノルマンディー上陸からバルジ大作戦(1944)

 

 などだが、やはりメインは「大祖国戦争」だろう。1941年にドイツ軍がソ連に侵攻してから、あしかけ5年にわたり両陸軍大国は血みどろの闘いを繰り広げた。無線が充実し指揮能力も高いドイツ軍に、個車(例:T-34)の性能の高さと数で対抗したソ連軍。スターリンは当時の戦争指導者としては、最も高い戦車リテラシーがあって、役に立つ戦車を早く見抜いた。

 

 よく知っている歴史ですが、コンパクトにまとめてもらった便利な書でした。