新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

巨砲搭載艦

 以前、従来のパナマ運河を通行できる船は全幅32.3m以下であった、と書いた。その幅で46cm主砲を相当数積んだ軍艦は造れない。相応の数で無ければ可能か?もちろん可能である。巨砲を1門だけ積んだ軍艦というのも例はある。他ならぬ日本海軍に。

 清国との緊張が高まっていたころ、清国北洋艦隊は2隻の巨艦を持っていた。排水量7,000t余、30.5cm主砲4基を積んだ「鎮遠定遠」である。これに対抗するため巨艦を持とうとしたが、当時日本の港湾設備等艦船運用プラットフォームは4,000トン級の艦までしかサポートできなかった。そこで、4,000トン級の船体に巨砲を1門だけ積んだわけである。三景艦と呼ばれた32cm砲搭載の防護巡洋艦として「松島・厳島・橋立」の3隻が建造された。(竣工1892年)

 結論から言うと、全く役に立たなかった。黄海海戦のおり1隻あたり4~5発発射できただけであり、命中しなかった。(1発当たったとする資料もある)日本海軍は、二度とこのような軍艦は建造していない。

 時は経て第一次大戦。英国は大型軽巡洋艦フューリアス」を建造した。排水量22,450t、前後の甲板に45.7cm砲を各1門搭載する計画だった。しかし建造中に航空機運用の実験艦に改造され、前甲板の砲が撤去された。したがって1917年に竣工した時は、前甲板に航空機を積み後甲板に「大和」並みの主砲1門を持つハイブリッド兵器(?)になっていた。結局1年も経たないうちに後甲板の砲も降ろされ、第一次大戦後に「世界初の本格的な航空母艦」となる。
 

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 大型艦の主砲は口径が大きくなり、射程が伸びてきた。直接照準ではなく放物線の弾道をとるようになる。そこで、ある程度の数を同時に発射(斉射という)して散布界というエリアに着弾させる方法をとる。そこに敵艦など目標がいれば、確率的に何発かあたるだろう。その意味では、1門や2門の砲ではどうしようもなく、やはりある程度の数(8~10門)は一斉射撃できることが必要だったわけだ。