新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

アシモフの見た100年後

 SFの巨人アイザック・アシモフは、「ロボット(工学)三原則」を定めたことで有名だが、この原則に関して1940年から1950年までの10年間に書き続けた短編を集めたものが本書。最近映画化もされたのだが、第二次世界大戦中から書かれていたことに驚いた。

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 人間の指示を理解することは出来るが、まだ口もきけない子守りロボット「ロビイ」の悲しいエピソードから、世界総監(大統領のことのようだ)を二期務めたアンドロイド「スチーブン・バイアリイ」に至る長いロボットの成長物語である。
 
 全編を通しての主人公は、ロボット心理学者(工学者ではありません)のスーザン・キャルビン博士。彼女がUSロボット&メカニカルマン株式会社で働き始めてから、70歳を越えて引退した後のインタビューまでを描いている。
 
 宇宙ステーションでの危険な任務に就くために、三原則を緩和したロボットが、人間と口論になって「消えてなくなれ」と言われ、普通の(緩和されていない)ロボットに紛れ込んでしまう話が面白い。原則緩和によって、人間を傷つけることも出来るようになってしまったロボットを野に放つことは出来ないが、63台全部を破棄できない(単価3万ドル)運営側は悩むわけだ。
 
 そんな微笑ましい、もの悲しいエピソードもいいのだが、最終話にアシモフ先生の考える地球についての記述があった。2058年の地球は世界政府として統一されていて、総人口33億人、首都はニューヨークだ。各地域の人口は下記の通り。
 
◆東方地区 中国、インド、インドシナ半島インドネシア等、首都上海、人口17億人
 
◆熱帯地区 地中海沿岸以外のアフリカと南アメリカ、首都ナイジェリアの新都、人口5億人
 
◆ヨーロッパ地区 地中海沿岸を含む旧ヨーロッパでロシア、イギリスは含まない、首都ジュネーブ、人口3億人
 
◆北方地区 アメリカ、カナダ、ロシア、イギリス、オセアニア等、首都オタワ、人口8億人
 
 すでに70億人を超えてしまっている世界の人口のことは、さしものアシモフ先生も予想できなかったようなのだが、それにしても日本はどこに行ってしまったのだろうか?やっぱり日本も韓国も台湾も、中国の一部とお考えでしょうか?