新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

大艦巨砲主義

 1920年代、世界のビッグセブンといわれた戦艦は7隻。日本の長門級長門陸奥)、米国のコロラド級コロラド・メリーランド・ウェストバージニア)、英国のネルソン級(ネルソン・ロドネイ)である。40cm級の主砲を持った7隻ということだった。戦艦が最強兵器であり、戦略兵器であると考えられていた時代である。日本海軍は八八艦隊構想というものを持っていた。、厳密に言うと「八八八艦隊構想」である、それは、艦齢八年以内の戦艦八隻、巡洋戦艦八隻を保有するという意味だった。
 
 戦艦長門陸奥はその1、2番艦として誕生した。ただ、その後の戦艦3~8番艦、巡洋戦艦1~8番艦は完成しなかった。巡洋戦艦1・2番艦は竣工しながら軍縮条約によって航空母艦への転換が決まり、赤城だけが完成した。2番艦天城は関東大震災で被災し、廃艦になった。
 
 戦艦3番艦加賀は天城の替わりに航空母艦に改装されることになり、4番艦だった土佐は標的艦になった、。主力艦(戦艦・巡洋戦艦のこと)の保有量を、米・英・日で5・5・3と定めたワシントン条約によってこのような措置が成されたわけである。航空母艦への改装は日本だけのことではなく、米国も巡洋戦艦レキシントンサラトガ航空母艦としている。

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 八八八艦隊構想によれば、巡洋戦艦の何隻かは46cm砲を積む計画だったという。日本海軍で伝統では、巡洋戦艦の艦名は山の名前をつけるので、伊吹・高雄などと命名される予定だったらしい。また大和級戦艦はもちろん、51cm主砲搭載超大和級戦艦構想もあった。現実には経済的事情により実現不可能だった構想だが、米国戦艦部隊をたたきのめす八八八艦隊というのは、夢のあるストーリーかもしれない。
 
 このテーマを追求した横山信義という作家もエンジニアの出身である。1992年「鋼鉄のリバイアサン」でデビューしているが、その後の「八八艦隊物語」で大艦巨砲主義作家としての地位を確立している。それでも「一番美しい主力艦は、ドイツのシャルンホルスト級(主砲28cm)」と主張して、シャルンホルスト日本海軍に譲られて巡洋戦艦浅間と名乗るシリーズも書いている。
 
 日清戦争の故事にもあるように、定遠鎮遠の巨砲より日本海軍の中口径砲が勝ったこともから、中口径速射砲の優位性も作中で扱っている。軽巡洋艦ブルックリン級(15.2cm15門、1万トン以上)も、日本の重巡洋艦(20cm8~10門、1万トン級)に対して優位だろうというわけだ。
 
 第二次大戦のあまたあるシミュレーション・ゲームを試してみると、戦艦が主役をするものは珍しく、大体は被害を吸収するのがその役目になる。(日本製ゲームは夜戦を扱うなど、いくつかある) 実際、役に立たなかったのだから仕方ないとは思う。