鈴木宗男議員は、昨年の参議院議員選挙で「日本維新の会」から当選、三度目の国政復帰を果たした。もともとは中川一郎衆議院議員の秘書で、中川議員の死後衆議院議員選挙に当選した。地盤を奪ったという噂もあり、息子の中川昭一議員との確執は(本書には触れられていないが)耳目の集まるところだった。
根室・釧路(根釧と略す)が地盤で、必然的に北方領土問題に深く関与することになる、経産省や総務省などと違い「族議員」の少ない外務省にとっての、ある種の「族議員」といってもいい。ただ本書にもあるように、外務省との関係が良好だったわけではない。特に田中真紀子外務大臣時代には、「ムネオ・マキコ戦争」を演じるなど外務省にうまく利用された感もある。
共著者の佐藤優氏は外務官僚、同志社大学神学研究科修了という面白い学歴を持ち、外務省でユニークな位置を占めていたが、偽計業務妨害で逮捕され起訴猶予にはなったものの表舞台からは消えた人物である。容疑が掛かった事件は、鈴木議員との関係から「国策捜査ででっち上げられたものだ」と主張している。
本書はこの2人の対談形式でほとんどが構成されている。日露双方の政治家、外務省官僚、日本の学識者など関係者が実名・写真入りで多数登場する。著者2人の主張を連ねている書だから、内容についてはある程度割り引いて考えるべきだが、随所にうなずける部分がある。
・北方領土問題は、橋本・イェリツィン時代にもっとも解決に近づいた。
・外務省系の団体が関与し、税金を使って問題解決を阻止しようとしている。
・いわば「北方領土ビジネス」で、問題が解決すると仕事がなくなるから。
・外務省には人材がいないのではなく、彼らが伸び伸び活躍できる環境がない。
・イェリツィンはゴルバチョフが大嫌いで、政策を片端からひっくり返した。
特に最後の点は、トランプ先生がオバマ政策をひっくり返すことばかりしているのと共通している。この2人、やはり似ているのは外観だけではないようだ。
ほかにも田中外務大臣の無茶苦茶ぶりや、それを利用した外務官僚(三人とも「✖田」と言う名前なので「悪のサンタ」と呼ばれているらしい)のふるまいなど、本当だとしたら暗澹たる気持ちになる話が多い。もともと、外務省はコアな中身の政策がないところ。最近のデジタル政策でも外務省と出会うことが多くなったが、政策よりは手続きで始まる話が多い。儀典担当と通訳以外はいらないと他の省の官僚が言うのを聞いたこともある。難しい国際情勢になってきて、日本の外交このままでいいのでしょうかね。