新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

小説の形をした教科書

 柘植久慶という作家には多くの軍事スリラーの著書があって、「前進か死か」全6冊などは本当にリアルな作品で何度も読んだ。一方ビジネス書やサバイバル書も多く、「パーフェクトコマンダー」という前線指揮官の心得を書いた本は、以前紹介している。

 

https://nicky-akira.hateblo.jp/entry/2019/05/26/140000

 

 本書「国家転覆」は、日本の政治を憂慮した男たちが国会議事堂を占拠して新政府を樹立、数々の改革を計る物語である。120名の壮士を隠れ蓑としての警備会社に集め、ロシアや中国で軍事訓練をし、ロシアからAK-47、ドグラノフ、RPG-7から対空ミサイルまで入手するプロセスにアイデア満載である。

 

 時代は、日本では「自・社・さ」の村山政権、米国ではクリントン(夫)政権のころ。朝鮮半島や中東で緊張が高まる中、日本の政治は迷走し、省益あって国益のない官僚に壟断され、産業界は活力を失っていく。

 

 これを憂えた男たちの中に、東南アジアでクーデターを指揮した経験を持つ日本人がいた。彼を前線指揮官に、実業家や財界の大物が加わってクーデターの計画がまとまっていく。単に国会議事堂を占拠するだけではなく、その後の政権確立、経済政策、外交政策も含めて緻密な計略が練られていく。

 

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 作者は本当に米国の民主党政権が嫌いで、他の著書でも「阿呆なカーター大統領」とか、「LGBTに支援されて当選したクリントン大統領」とののしっているし、後に「オバマ大統領暗殺」のストーリーで書いた本もある。本書でも、クーデター政権を認証しないであろうクリントン大統領を、あらかじめ暗殺しようとする。

 

 小説としても「いくらなんでも」と思うのだが、これも柘植久慶流。だから僕は本書は小説としてよりは、クーデターの手順を示した教科書と思っている。上記のように政権交代して社会全体を改革するプランが、多少乱暴ではあるが示されているからだ。

 

 例えば市民へのバラ撒き給付でも、貯金されてしまわないように10回裏書き(つまり流通)した後でなければ最終的に償還しない債券を使えと書いてある。これなどは今のコロナ対策ででも使えそうに思う。クリントン暗殺はともかく、日本の政治改革もこのくらいの「気持ち」をもって進めてほしいなとは思います。