57年前の今日、テキサス州ダラス市街でケネディ大統領が暗殺された。ソ連帰りの元海兵隊員オズワルドが逮捕されたが、警察からの移送中に彼も暗殺されてしまった。事件はオズワルドの単独犯行で一応の決着を見たが、それを信じない人は多い。1992年にはオリバー・ストーン監督が映画「JFK」を発表、オズワルド単独犯説に疑問を投げかけた。本書(2000年発表)は軍事スリラーで有名な作家柘植久慶が、現地のフィールドワークを含めた調査の結果をノンフィクション風にまとめたものである。
作者は「ジャッカルの日」を書いたフォーサイスとも交流し、ド=ゴール暗殺未遂事件と本件の共通点を認識し、2人の大統領暗殺に同様の武器が使われたとの仮説で本書を書いている。まずケネディ暗殺の動機だが、容疑集団はあふれるほど多い。
・亡命キューバ人 ピッグス湾事件で裏切られた
・イタリアマフィア キューバの利権回復が成らなかった
・副大統領ジョンソン 政権内で孤立し始めていた
・南部白人至上主義者 黒人優遇の姿勢に不満
本書は、これらの集団が少しずつ結びついて大統領をジョンソンの地元テキサス州におびき寄せ、パレードの道を狙撃しやすいように変えるなど工作をしたと言う。雇われたのはフランス人の狙撃手<マックス>、彼はド=ゴール暗殺をしたかったのだがフランスでは顔が売れていてダメだった。イギリス人<ジャッカル>が雇われるが、暗殺は失敗してしまう。
しかし<マックス>は<ジャッカル>と同じモーゼル改造銃と、炸薬弾の組み合わせでケネディを狙うことにした。暗殺集団はほかに2人の狙撃手を選び、通常のモーゼルとカルカノ銃を持たせた。イタリア製カルカノは信頼性の低いライフルだが、犯人役に選んだオズワルドが所有していたことから使用されることになる。
大統領が3発撃たれていることは公表されている。作者はモーゼル、カルカノが1発づつ当てたものの致命傷ではなく、パレードの進行方向右手の丘から撃った<マックス>の炸裂弾が頭部の1/3を吹き飛ばしたと説明している。作者は実際にその丘に登り、「手榴弾でも投げられそうだ」と近さを強調している。
全ては2039年に明らかにされるといいますが、それ以前に読めた本書のライフルや弾丸の選び方はさすがにプロを思わせるものでした。