新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ロシアの「オプ・センター」

 トム・クランシー精神科医であるスティーブ・ピチェニックと共著した「オプ・センター」シリーズ、第六作の「国連制圧」が割と面白かったので、さかのぼって第二作である本書を読んでみた。

 

 国際紛争の中で緊急事態を察知するハイテク情報網を持ち、強制排除能力があるストライカー部隊を傘下に収める「オプ・センター」は、米国の独立情報機関である。第一作から長官を務めているポール・フッドは、子煩悩な父親でもある。本書でも愛妻シャロンと子供たちを連れて西海岸で休暇中だったのだが、ロシア情勢の急変で休暇を切り上げる羽目になってしまう。第六作でフッドが長官職を辞すと言い出すのも、このあたりに伏線があるようだ。

 

 本書では、「オプ・センター」のライバルとして「ロシア作戦センター」とオロコフ指揮官が登場する。同様のニーズから生まれたこの組織、サンクトペテルブルグで活動を始めて早々この街でスパイ活動をしていた3人の西側のアセットを見つけ、2人を殺し最後の一人も拘束して裏切りを迫る。

 

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 ところがオロコフ指揮官のチームは、それ以外に国内の不穏な動きもつかんでいた。実は大統領選挙に敗れた内務大臣がクーデターを企画していて、そのきっかけとしてウクライナポーランドで反政府暴動を扇動し軍事行動に出ようとしていたのだ。

 

 内務大臣側は、ロシアマフィアから調達した暴動扇動のための大量のドル紙幣をウクライナに運ぼうとしていたのだが、悪天候と事故でウラジオストックに降ろさざるを得なくなる。ウラジオから鉄道に積み替えて運ぼうとするのを、作戦センターが探知したのだ。フッドのチームもこれを探知、ドル紙幣を摘んだ列車を襲撃するためストライカーチームをヘルシンキに送り込む。

 

 ストライカーチームは、捕獲したイリューシン76を使ってシベリアに向かう。表紙の絵は、そのイリューシンを怪しんだロシア側が戦闘機で追い詰めるシーンである。一方内務大臣側もウラジオのスペッツナズ1個分隊を指揮下に置き、列車に乗せてこれを守ろうとする。

 

 このシリーズ、冷戦後の国家紛争をテーマにしているせいか、ドンパチはほとんどない。緊張が徐々に高まっていくのだが、「大山鳴動・・・ネズミ一匹」になることが多い。時代を意識すればしかたないのかもしれませんが、ちょっとフラストレーションがたまります。本書はやや期待外れでした。