新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

250年続く組織の自己革新

 アメリ海兵隊は、独立戦争前の1775年に設立された。もともとは艦上勤務の警察組織だったらしい。NCISのギブス捜査官も海兵隊出身という設定だが、警察組織だったというのはうなずけることだ。その後、前進基地防護・陸上部隊支援・水陸両用強襲・即応部隊(後に世界規模で)と役割は変化していく。

 

 戦歴としても第一次世界大戦第二次世界大戦朝鮮戦争ベトナム戦闘、湾岸戦争と、米国が戦ったすべての戦争に先兵として参加している。ジョン・ウェイン主演の「硫黄島の砂」など、その活躍を紹介した映画も数知れない。海兵隊出身の有名人・政治家も多い。チャールトン・ヘストンはそうだと思うが、ロバート・ワグナーもそうだったとは知らなかった。

 

 著者の野中郁次郎は「失敗の本質」という書で日本軍の組織的欠陥を追及したが、その時相手方の「アメリ海兵隊」という組織に興味を覚え研究したとまえがきで言っている。著者は組織論として、この非営利型組織がどうやって自己革新を遂げてきたかに注目して本書を書いた。民間企業のように営利型組織であれば、経営が傾けば自己革新をする。傾かないとイノベーションに背を向ける傾向もあるが・・・。

 

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 著者は、非営利型組織として自己革新を200年以上続けてこられたかを以下のように整理している。

 

◆組織に挑戦的な創造力がある

 経験に学ぶだけではなく将来の世界像を描いて組織の使命を問い直すことができる。絶えず自ら不安定性を生み出し、自己創造することで連続した小さな進化と飛躍的な大進化の双方を追及できる。その要件として、以下の6項目がある。

・存在理由の問いかけと生存領域の進化

・独自能力を可能にする機能配置

・分化と統合を極大化

・中核技能の学習と共有

・人間&機械系によるインテリジェンス・システム

・存在価値の体化

 

 言葉は分かりにくいところもあるが僕なりに要約すると、将来の国際情勢を予測して自らの役割を決め、その役割を果たせる機能を開発し続けるということだ。機能実現のための資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を準備するのだが、ヒトと情報について継続して育成・獲得することを1項目づつ挙げているのが特徴だ。

 

これらの示唆は、民間企業の経営にも生かせることです。さらに個人の生き方にも偉大なヒントになると思います。