新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

元自衛官の人と話す前に

 サイバーセキュリティなどという(一般の人からの印象では)陰気で危険なことに関わりあっていると、どうしても犯罪からみや軍事からみの話が多くなる。中学生の頃から海外ミステリーに溺れ、大学生になっては軍事関係の書を読み漁り「机上演習」までやった僕としては、それほど不得手な分野とは言えない。

 

 そうはいっても、「半可通」な知識で専門家とはなすのは危険だ。特に最近警察OBは少ないものの、自衛隊OBの人たちとはひろくお付き合いができてきた。そんなわけで、古い書棚から引っ張り出してきたのが本書。

 

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 実際に砲火を交える戦争でなくても、企業間の競争には似た面がある。そう思って「企業参謀」の一員になったアラサーのころ読んだ本である。「戦場の方程式」は「企業競争の方程式」でもあるのだ。「野外令」そのものは読んだことはなのだが、旅団以上の部隊運用の基本理念を記したものらしい。冒頭に人類2,600年余の歴史で機能的に導き出された「戦いの原則」があり、まず9つの原則が示されている。

 

・目的の原則 作戦行動によって何を達成するかを確立する。

・主導の原則 相手を引きずり回し、逆に引きずり回されない。

・奇襲の原則 相手が予期しない状況で戦いを始める。

・集中の原則 相手に勝る戦力を要点に集中させる。

・経済の原則 集中すれば希薄なところが出てくる。要は手の抜き方。

・機動の原則 集中のためには迅速な戦力の移動が必要。

・統一の原則 全部隊に共通の目的を共有させる。

・簡明の原則 加えて目標や手段などを明確化し徹底する。

・警戒の原則 自己を守るために敵情などの情報に留意する。

 

 こうやって並べてみると、技術開発やマーケティングにおいても同じことを考えるべきであるのがよくわかる。さらに本書では、具体的にナポレオン戦争中東戦争のような戦略級から、八甲田山雪中行軍のような作戦級まで9つの具体例を持って、9つの原則を守ったか否かの評価を下している。

 

 よく知られた「ミッドウェー攻略か、敵機動部隊撃滅か」という目的の不徹底などだけでなく、多くの事例で原則を守らなかった側がどういう目にあったかを知るのは重要だ。さて、久しぶりに読み返したので「半可通+α」くらいにはなったはずです。加えて元自衛官の人たちに、色々教えてもらいましょう。