新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

まさに仰る通り!

 2022年発表の本書は、経済学者野口悠紀雄教授の「日本経済復活の処方箋」。このテーマは経営視点で論じられることも多いが、本書は賃金と生産性に焦点を当てている。前半は日本経済の現状を統計値から明らかにしているだけだが、後半「どうすれば賃金が上がるか」の議論は正鵠を射ている。正直全て仰る通りで、唯一FTE指標(*1)を使った統計に修正すべしということだけが初めて知ったこと。各方面への提案として、

 

◆政府・日銀

 円安誘導は日本の価値を下げているだけ、すぐにも金融緩和をやめて、円の価値を守るようにせよ。バラマキでは格差是正、賃金是正の根本には届かない。各所に残る前時代の規制を緩和し、新規参入や労働移動を促すべし。退職金優遇、専業主婦優遇の税制や社会保障制度は見直すべし。

 

◇政界

 消費者や労働者を「真に」サポートする政党が現れるべき。

 

        

 

◇民間企業

 そもそも日本企業の稼ぐ力が伸びていないのが、賃金が上がらない最大原因。従業員一人当たりの付加価値を向上させる経営に徹すべし。より生産性が高い業態(例:ファブレス)への移行や、デジタル投資によって付加価値を上げる。終身雇用、年功序列型賃金体系を改めるなども、当然必要。

 

◆なかでも中小企業

 大企業に比べて(種々の理由で)生産性が低いまま。しかし大企業に比べて、より効率的に付加価値向上が可能。

 

◆労働者

 個々人の生産性を高める努力をするのは当然として、賃金を上げない代わりに解雇されないことを求めてはいけない。

 

 特に岸田総理には「分配なくして成長なしは誤り。成長なくしては分配などできないことを知れ」とのメッセージである。かつて経済学者の竹中教授が小泉内閣で閣僚入りして、改革の旗振りをしたことがあります。野口先生にも、是非閣僚入りをお願いしたいです。

 

*1:日本はパートタイム労働者が多いので、労働時間が短い人は1人ではなく実働時間に合わせた0.x人とした指標で議論すべしということ。