新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

憲法改正のポイント

 昨年安倍総理が突然辞任して以来、あまりこの団体の名前を聞かなくなった。もう「日本学術会議」の話に埋もれてしまったのかもしれないが、立ち位置としては逆のような存在だ。軍事研究まかりならんという「学術」会議に対し、占領憲法を改正し国軍復活を目指すともいう会議がこれ。

 

 本書は筆者が1年かけて種々の文献をあたり、日本会議とそれの中核をなしている人たちの過去から現在をまとめ、2016年に発表したもの。筆者によれば第二次・第三次安倍内閣では閣僚など中心的な人たちに、日本会議のメンバーが多いという。筆者が「ネトウヨ」などと言われる右傾化した人たちの動きを気にし始めたのは、第一次安倍内閣が倒れたころ。その後政権交代などあったが安倍総理は見事に復活し、社会はそんなに右翼化していないのに政治家の右翼化が目立ったという。

 

 本書は同会議の広告塔になっている人、代表的な人だけでなく、その背後・目立たないところで組織を束ねている人についても、人となりや過去から現在までをつまびらかにしている。その情報も貴重なのだが、僕としてはこの会議が目指すところに興味を惹かれた。それは6項目あって、個々にはうなずける文言が並んでいるのだが、

 

・「伝統の国柄」を明日の日本に適用するとある。

・守るべき対象として「国の名誉」が「国民の命」より前に来る。

・教育目標に「日本の感性を育む」が挙げられている。

 

 あたりに気になる点が残る。

 

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 一番の具体的な活動目標は憲法改正で、最終目標は「明治憲法の復活」と口走った人もいるらしい。そこまでは当面難しいとして、今改正ポイントを挙げると、

 

1.緊急事態条項の追加

 緊急事態に、基本的人権三権分立などの原則を一時停止できるように。

2.個人から家族へ

 個人として尊重(13条)、個人の尊厳(24条)を削除し、家族保護条項と追加。

3.自衛隊の国軍化

 戦力不保持(9条2項)の改訂

 

 であって、プライオリティはこの順だという。自衛隊より家族が重要というわけ。それで分かったのが、昨今夫婦別姓議論が後退しているという件。じわりこういうところに、「日本学術会議」の意向が浮かんでいるのだろうか?

 

 「正論」「Will」などの雑誌とは対極にある論説の書でした。僕は白黒付けるつもりはないのですが、両者の意見を聞いておく必要はあると思いましたよ。