新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

憲法改正ではなく新憲法を

 現在88歳、さすがにTV等でお見掛けすることも無くなったが、石原慎太郎東京都知事については、様々な批判や賛意があるという。本書は2018年に、2012年(都知事在職中)から2017年ごろまで、雑誌や新聞に寄稿したものを再編集して出版されている。元々は作家で、1956年「太陽の季節」で芥川賞を受賞している。

 

 その後政界に転じ、衆議院議員9期、参議院議員1期、環境庁長官運輸大臣を歴任、東京都知事には13年半在職した。政治家としては「日本維新の会」の代表もして、2014年に政界を引退している。本書は回想録というわけではないが、人生を通じて訴えかけてきたものが凝縮されていると思う。主旨は、

 

・16世紀から長く続いた白人支配の時代は終わった。

・白人たちは狡知をもって他の民族を支配してきた。

日中友好は欺瞞と幻想、中国との闘いは終わらない。

・日本軍は今でも強い、自前のミサイル・航空機をもつべし。

憲法の日本語はおかしい。翻訳憲法を捨て、新憲法を日本人が作るべし。

 

 というもの。比較的多くの紙幅を割いているのが、尖閣問題だ。都知事時代の終盤、知事として尖閣諸島の所有者と会い購入したいと申し入れている。時は民主党政権、野田内閣だったが、筆者によると外務省の差し金で国有化されてしまったとのこと。

 

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 曰く「国が保有すれば、何もしないので中国との摩擦は少ない。都が買えば知事が何をするか分からない」との外務省の甘言に、野田総理・玄葉外相が乗っかってしまったからだとある。実際著者は、灯台を作り漁船のための避難港も作るつもりでいた。野田総理に「購入した以上、国としてどうするのか」と詰め寄り、「まず太陽光発電パネル・・・」との回答にキレている。もちろん野田政権は、太陽光パネルすら設置しなかった。この件だけでなく、著者も官僚を「省益しか考えない奸族」と思っているフシが本書のあちこちにある。

 

 「新憲法」の骨格は書いてないが、日本人の手で作ることを再三主張している。その意味では安倍政権には期待していたようで、自らが代表をしていた「日本維新の会」が意志を継いでくれることを願っているはずだ。

 

 ある意味「日本のトランプ」だったかもしれない人です。主張にはうなずけるところもあるのですが、広く支持を集めることは出来なかったです。それは民衆が無知だったから・・・でしょうか?