新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

米露両大統領の陰謀

 派手な航空(&宇宙)軍事スリラーが得意なデイル・ブラウンの諸作もいくつか紹介した。「ロシアの核」では、モルドヴァを巡ってウクライナ・ロシア両国が戦争状態に入り、核兵器が使われることになる。「ロシアの核」を読んだときには、まさか両国の熱い戦争が始まり核のボタンが見え隠れする事態になるとは思っていなかった。

 

 さらに「アメリカ本土空爆指令」では、ロシアがシベリアから直接米国本土を核攻撃し、米軍の航空・核戦力の大半を無力化してしまう話だった。かねてロシアの脅威を言い続けてきた空軍のマクラナハン将軍は、残った航空戦力を使って反撃。ロシア軍を壊滅させグルズイロフ大統領の命をも奪う。

 

グルイズロフ大統領が恐れた男 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 2009年発表の本書は「アメリカ・・・」の続編のような作品。米露両国の大統領が替わり、ロシアのゼヴィティン大統領は米国とマクラナハン将軍への復讐の機会を窺っていた。一方米国のガートナー大統領は、宇宙開発に巨額のカネを使うマクラナハンの<ハイテク航空宇宙兵器センター>を目に仇にしていた。海軍重視の彼は、このセンターが無ければ空母機動艦隊を2個増設できると目算している。

 

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 マクラナハンの戦力は、地球の隅々まで監視できる宇宙ステーション・そこと地表を往復できる<ブラックスタリオン>という戦闘能力もあるシャトル無人化改装したB-1爆撃機とそれに積む超音速ミサイルなど、前作同様小型のモビルスーツまで出てくる。マクラナハンは宇宙ステーションと頻繁に往来して、ついにストレスから軽い心臓発作を起こしてしまう。

 

 ゼヴィティン大統領は、高収束レーザー兵器と爆撃機から発射する対宇宙ミサイルを開発、マクラナハンの宇宙ステーションやシャトルを狙っていた。またガートナー大統領も命令違反を盾に、マクラナハンを解任しようとする。まるで、ロシア対マクラナハン対アメリカという構図だ。敵に敵は味方という理屈で、ゼヴィティンとガートナーが<ホットライン>で接触、協力して陰謀を巡らせ始める。

 

 前作の評に「上回るスケールを求めるあまり、ちょっとやりすぎでは」と書いたのだが、本書は前作以上の「やりすぎ」。もう次は地球壊滅・・・くらいしかエスカレートできませんよ。どうしましょう。