本書は以前「地名」と「食」を紹介した、21世紀研究会の「世界地図シリーズ」の1冊。今回は「イスラーム」である。20世紀末の統計で、世界のイスラーム教徒は約12億人いるという。国別で多い順に、
1)インドネシア 1.8億人(88%)
2)パキスタン 1.3億人(97%)
3)バングラデシュ 1.1億人(87%)
4)インド 1.1億人(11%)
5)トルコ 0.6億人(99%)
となっている。カッコ内は全国民中の比率。ロシアにも1,200万人ほど、米国にも700万人ほど信者がいるが、中国については統計値がない。アラビア半島で7世紀初めに興った宗教で、自然環境が厳しく他の宗教からの弾圧にも耐えられるよう、厳しい規律が設けられている。信仰には5本の柱があり、
・礼拝を欠かさぬこと
・貧しい人や旅人に喜捨(施し)をすること
・聖地メッカへの大巡礼を行えるよう努力すること
が求められる。「コーランか剣か」のスタンスで好戦的な宗教と思われたり、4人までの妻を持てると男尊女卑の風習があると言われるのは、全て誤解だとある。
さてその世界地図だが、どうしても世界の紛争地域に重なっている。本書では、中東戦争、アフガニスタン紛争、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、ユーゴスラビア内戦、チェチェン紛争などを取り上げている。さらに分離独立を目指す地域として、フィリピンのミンダナオ島、インドネシアのアチェ地区・西カリマンタン州・イリアンジャヤ州もあり、マレーシアでもイスラーム教徒の不満が鬱積しているという。
中国についても以前ご紹介した新疆ウイグル自治区だけでなく、より東側の青海や甘粛地区にもイスラーム教徒は多い。習大人にとっての悩ましいエリアであることは確かだ。
今はシリアやクルド人地区にも戦火が広がっているが、やはり最大の火薬庫はパレスチナ問題だと本書は多くのページを割いて、その歴史を詳述している。4次にわたる中東戦争で、アラブの真ん中にユダヤ教国家ができて強力な軍事力を誇っている。イスラーム諸国も一枚岩ではないので、この小国をどうすることもできない。
12億人(あるいはそれ以上)の勢力であるイスラーム教徒、彼らが団結したら恐ろしい勢力になるのでしょうが・・・。