新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

口径統一に最後まで至らず

 光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「小銃・拳銃・機関銃」である。帝国陸軍がどのような小火器を使っていたかを、写真や図面約400点とともに紹介したのが本書。陸軍が最初に採用した「村田式13年歩兵銃」は、口径11mmの単発銃だった。日露戦争では「30年式歩兵銃」が配備されていて、口径は6.5mmで5連発となっていた。

 

 その後有名な「38式歩兵銃」が配備され、新しい銃が開発されても、太平洋戦争終結まで使われた。これも口径は6.5mmで5連発である。欧米の標準は7.7~7.9mmだったから、貫通力も射程もこれらには及ばない。第一次世界大戦当時の「38式機関銃」も6.5mmだったから弾薬の互換性はあったが、より強力な火力として「92式重機関銃」が配備されると、互換性がなくなった。小銃も「99式小銃」は7.7mmだ。この口径統一は、生産能力の不足から最後までできなかった。

 

 物資豊富な米陸軍は、7.7mmの半自動式8連発「M-1ガーランド」を標準に、同じく7.7mmの自動小銃BAR(20連発)を分隊に配備した。偵察用部隊にはトミーガン(.45口径の拳銃弾を使う)も持たせた。「Combat」でサンダース軍曹が撃ちまくっていたサブマシンガンだ。加えて大量の機関銃を歩兵部隊にも配備していた。このように大量の弾薬をバラ撒くことができたのは、米国の資源・生産力ゆえである。

 

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 帝国陸軍でも自動小銃の試作品はあったが、実用化はされなかった。サブマシンガンもドイツ製(シュマイザー)などを参考に「100式短機関銃」を開発したが、生産量は少ない。戦争末期に沖縄に特攻をかけた空挺部隊が装備していたという。白兵戦好きの日本軍は、サブマシンガンにも銃剣を付けられるようにしていた。

 

 本書で面白かったのは、銃器のお値段のリストが付いていたこと。当時と今の郵便料金の比率から計算してみると、

 

・38式歩兵銃 32万円

・95式軍刀 15万円

・14年式拳銃 35万円

・92式車載13mm機関砲 2,140万円

・92式重機関銃 856万円

・96式軽機関銃 400万円

・30式銃剣 4.5万円

・鉄帽 3.5万円

・97式中戦車(除く兵装) 5億8,800万円

 

 という目安が見えてきた。やっぱり軍備ってお金がかかるものですね。