新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

パンデミック後の「世界の知性」

 本書は、以前「未来を読む」や「未完の資本主義」などを紹介した、PHP新書の「世界の知性シリーズ」。2021年発表で、いつものように、ジャーナリスト大野和基氏が世界の有識者にインタビューしたものだ。<Voice>誌に2020~2021年に連載された記事から9人分を選び、加筆などしている。

 

 このシリーズに登場する有識者は、通常Global & Digitalの潮流には批判的な人が多い。今回もその通りなのだが、僕としては本書に登場する認知神経学者ターリ・シャーロット教授の言うように「確証バイアス」に囚われないために、このシリーズを読むようにしている。

 

 これまでの書と違うのは、ほとんどのインタビューがビデオ会議ツールを使って成されたこと。無論「COVID-19」禍のためである。それゆえ、有識者の意見もパンデミックを意識した内容になっている。

 

        

 

 印象的なコメントを紹介しよう。

 

◆人類は「命の経済」分野(健康・教育・衛生・食糧等)に80%のお金を使うべきだが、現状では50%しか使わず、宇宙・ファッションなどに浪費している。

 

◆欧州は住む場所ではなく、移民たちのホテルになってしまった。日本は移民に慎重というが、欧州の例を見ればそうであるべきだ。

 

◆移民排斥は、没落した中間層が自分より弱い者を見つけて叩いているため。ポピュリズム政治家やメディアがこれを煽っている。

 

◆シェアリングエコノミーは、本当の共同体とはちがう。そこにはモラルも責任感もない。共同体は自らアカウンタビリティをもつべきだ。

 

 最後の点が一番考えさせられた。例えば<U-ber>は運転手に対して(雇用)責任を持たない。これでいいのかという問いかけ。僕らは<DX with Cybersecurity>と言っていますが、同様に<Innovation with Accountability>が重要ということですね。